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2005.09.28

ナージャ・サレルノ=ソネンバーグも独自レーベルを始動

nadja 日本でも熱狂的なファンを持つヴァイオリニストのナージャ・サレルノ=ソネンバーグ(44:写真)が独自レーベル「NSS Music」を発足させました。先ずピアノのアン・マレー・マクダモットとのデュオ・リサイタルと、チャイコフスキーとクラリス・アサドの「ヴァイオリン協奏曲」が収録されたライブ盤の、計2タイトルがリリースされます。これらは同レーベルの公式サイトで購入可能です。
 さて'80~'90年代のCDバブルが崩壊し、音楽レコードの好セールスに歯止めが掛かると、大手レーベルは「合理化」を名目に多くのアーティストとの契約に及び腰となり、場合によっては契約を解除したりすることもありました。ナージャもかつてはEMIとの専属契約を結んでいたのですが、契約が切れた今では廃盤になった自らのアルバムを再発させたくても思うようにはいかず、EMIに対し再発を行うよう説得することもあったそうです。そんなフラストレーションが彼女を独自レーベルへと駆り立てた要因の一つと思われますが、ともあれ今後のレーベル活動の継続に期待したいです。

(参考)PlaybillArts. Nadja Salerno-Sonnenberg Launches Record Label. (September 27, 2005)

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2005.09.27

クラシック版ハロプロ

Joseph_Mcmanners 先日「The Stage」紙(→公式サイト)にSony BMGがオーディション広告を掲載しました。そこには「アレッド・ジョーンズやシャルロット・チャーチに続くのは君かも?10歳から14歳までの少年少女による次世代クラシック・クロスオーヴァー・バンドのメンバーを募集します」と書かれていました。つまりソニーはローティーンだけで構成されたクラシック音楽グループをデビューさせ、大々的に売り出そうと目論んでいるのです。クラシックの分野ではこれまで数え切れない位の「神童」たちがデビューしていますが、10代前半の少年少女だけでグループを結成させる、という動きは前例がなかったのではないでしょうか。ソニーは最近若干12歳にしてBBCのテレビ・オペラの主役の座を射止めたばかりのJoseph McManners君(写真)と200万ポンド(約4億円)という記録的金額で契約を交わしたばかりです(→参照:9/16の「Hotwire News」)。このことと今回のオーティションとの関連は不明ですが、ともあれSony BMGのクラシック部門が急激に「ハロー!プロジェクト」的アイドル路線へと動いていることは確かなようです。それにしても「次のシャルロット・チャーチ」ってどうなんでしょう。デビュー当時は「天使の歌声」ともてはやされたシャルロットも、今ではパリス・ヒルトンとかブリトニー・スピアーズとかヴィクトリア夫人と同等の扱いでタブロイド紙を賑わせるようになってしまいましたし(→参照)。そういえばスパイス・ガールズも「The Stage」紙の広告でメンバーを募集したんですよね…。

(参考)
Scotsman.com. Sony to create classical band (September 26, 2005)

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2005.09.25

マーラーが私に語りかけること

という、いかにもクラヲタ風味溢れるタイトルを掲げてみましたが(笑)、ノリントンの「巨人」(→一つ前のエントリ)と、その演奏に対する世間の反応を眺めながら色々と考えてみました。
といいますかネット上でノリントンのマーラーを褒めてるのって私以外あまり見かけないような気がするんですけど(苦笑)。この状況を「まぁノリントンの『第九』が初発盤で出たとき、あまりにオモロイので同好の士たちに聴かせて回ったら『何や!このケッタイな演奏は!』と総スカンを喰らったし、まあマーラーでのこの反応も頷けるかな」と最初は軽く考えていたのですが、ノリントンとは対照的に評判の高いベルティーニやテンシュテットとの相違に思いを巡らしてみると、単なる「好き/嫌い」を超えたものが見えてきました。

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2005.09.21

【レビュー】ノリントンの「巨人」

norrington_mahler1

曲目:マーラー:交響曲第1番「巨人」(「花の章」付)
演奏:サー・ロジャー・ノリントン指揮シュトゥットガルト放送響

 2001年にエイジ・オブ・エンライトゥンメント管との演奏会以来、若きマーラーの才気が溢れる「交響曲第1番」をノリントンが幾度か演奏していることは知ってはいましたが、それを実際に聴くまではどのような出来なのかと不安が先に立ち、正直聴くのが恐かったです。オーケストラ・サウンドの改革に取り組み、「ピュア・トーン」「スムースな音」を追及する一方、これまで「良し」とされてきた演奏法を徹底排除する手法は常に賛否両論でした。私は彼の指揮による後期ロマン派の作品、例えばエルガー「交響曲第1番」やチャイコフスキーの「悲愴」などの演奏には共鳴しつつも、「得る」部分だけでなく「失う」部分もあるな、という気持ちも少なからず持ちました。特に「悲愴」の演奏には前のエントリで触れたロシア的「甘み」が感じられず私には不満でした。エルガーよりも、チャイコフスキーよりも自らの喜怒哀楽を臆面なく表出させるタイプであるマーラーの「巨人」でノリントンはどう出るか、と身構えつつ聴き始めました。結論から申し上げると当初の不安は杞憂に終わり、これまでのマーラー演奏からは感じることができない美点を随所に感じることが出来ました。このノリントンの演奏には「新たなマーラー指揮者の登場」を予感させるものがあります。

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2005.09.18

これは私のためにあるサイトですか

 最近天下の「ニューヨーク・タイムズ」紙が、こんなサイトを紹介していました。

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Beauty in Music」は女性演奏家、しかも美人奏者だけを扱ったサイトです。取り上げられているアーティストの数は600を超え、国籍、人種も多種多様でバラエティに富んでいます。ここではラベック姉妹エレーヌ・グリモーアンナ・ネトレプコステファニア・ボンファデッリらの「常連」(!?)アーティストたちに交じって、諏訪内晶子庄司紗矢香磯絵里子神谷未穂(以上ヴァイオリニスト)、児玉麻里児玉桃三浦友理枝菊地洋子(以上ピアニスト)らの日本人演奏家たちがリストアップされています。当ダイアリーでお馴染みのリーズ・ドゥ・ラ・サールバイバ・スクリッドの名前もありますよ(笑)。また意外なところではライス国務長官も「ピアニスト」として紹介されています。
私も「より美しい性」のアーティストの紹介には熱心なのですが、ここまで徹底しているサイトを運営する勇気は私にはありません(苦笑)。また暇な時にでも覗いて品定めをしてみたい未知のアーティスト探しをしたいと思います。ところで私、最近ヴィジュアル的に気になっているアーティストがいるんです。「Beauty in Music」を紹介したどさくさに紛れて写真をアップしてみましょう(笑)。

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2005.09.17

「バンザ~イ無しよ。」 from フィンランド

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(写真)「第3回シベリウス指揮者コンクール」の審査委員長のエサ・ペッカ・サロネン(左)と、同コンクールで「参加賞」を受賞したヤン・ショーデルブロム(右)。

 今月ヘルシンキで開催された「第3回シベリウス指揮者コンクール」は、優勝者(第1位:賞金15,000ユーロ)無しという結果に終わりました。ここまではコンクールでよくある話ですが、審査委員長のエサ・ペッカ・サロネン(47、作曲家・指揮者)を始めとする審査員たちは第2位(同12,000ユーロ)、第3位(同10,000ユーロ)も「該当者なし」と発表しました。
 その代わりに審査委員会は賞金額が低い賞を新設し、指揮者たちに与えることにしました。最終予選に勝ち残りシベリウスの交響曲を演奏した3人のうちAndreas Tselikas(27:ギリシャ)には「incentive prize」(奨励賞:7500ユーロ)を、ヤン・ショーデルブロム(Jan Söderblom, 34:フィンランド)と佐藤俊太郎(33:日本)には「参加賞」(1500ユーロ)が授与されました。実質的な賞金減額といえるこの発表には居合わせた観客も驚いたようですが、サロネン氏は「この決定には議論を要したが、コンクールの規定では審査委員が賞を自由に変更してよいことになっている」(※1)とその理由を説明しました。またサロネン氏は「今回のコンクールは低調だった。このコンクールの賞に値するシベリウス演奏をした指揮者は一人もいなかった」ともコメントしています。


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2005.09.14

【レビュー】カラヤン&ベルリン・フィルのチャイコフスキー三大交響曲(EMI録音)

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1.チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調 作品36 (CD1)
2.同/同第5番ホ短調 作品64
  (CD1;第1&2楽章、CD2;第3&4楽章)
3.同/同第6番ロ短調 作品74「悲愴」 (CD2)

(演奏)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル

 オリジナルテープに「キズ」があるという理由でなかなか再発されなかった「交響曲第4番」を含むチャイコフスキー後期の3つの交響曲の録音が、最近になって韓国のEMIからリリースされました。それにしてもここで指揮をしているのは本当にカラヤンなのでしょうか。そう疑ってしまうほど、私のイメージするカラヤンとは異なるアプローチが展開されています。
 (「坂本くん」註;以下の文章は、やや独断と偏見を含む内容ですので、そのあたりをご理解の上でお読み下さい)

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2005.09.12

ゴールドシュタインの「交響曲第21番」

Ovsyaniko-Kulikovsky_CD 先日ネットラジオで「Bayern 4 Klassik」を聴いていたらミハイル・ゴールドシュタイン(Michael Goldstein)の「交響曲第21番」が流れてきたので、「LOCK ON」を慌てて立ち上げて録音しました。冒頭部を録り逃してしまったのは残念ですが、とりあえずネーメ・ヤルヴィ指揮(←こんな曲を取り上げるところが「交響曲全集男」父ヤルヴィらしい)、北ドイツ放送響の演奏でこの珍曲を聴くことができて良かったです(※1)。
 この曲は当初ニコライ・オフシャニコ=クリコフスキーの作品として第2次大戦後の旧ソ連では何度か演奏され、ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルによる録音(→amazon.de:写真)も遺されています。ウクライナで作曲活動をしていたゴールドシュタインがなぜわざわざ(生前のクライスラーのように)自作に別人の名前をクレジットするという行為に及んだのでしょうか。

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2005.09.11

【演奏会レポ】木嶋真優リサイタル

1.シューベルト/ロンドロ短調 D895(作品70)
2.フランク/ヴァイオリンソナタイ長調
3.プロコフィエフ/同第1番 作品80
4.チャイコフスキー/ワルツ・スケルツォハ長調 作品34
5.(アンコール)モンティ/チャールダッシュ

演奏:木嶋真優(ヴァイオリン)江口玲(ピアノ)
(会場:神戸新聞松方ホール 2005年9月4日)

 先日聴いたショスタコーヴィチの協奏曲が素晴らしかったので、9月4日の神戸での江口玲とのデュオ・リサイタルにも出かけてみました。プログラムはシューベルト、プロコフィエフ、フランクという組合せですが、演奏順は前半にフランク、そしてプロコフィエフを後半のメインに置いていました。これを見て私は「彼女はプロコフィエフの方が自信あるのかな」と思ったのですが、予想通りプロコフィエフの方が確信に満ちた演奏でした。決してフランクがダメ、というわけではなく、むしろ素晴らしい部類に入る演奏だったことは間違いないのですが、現在の木嶋さんにはプロコフィエフの方が合ってるかな、と感じた次第です。

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2005.09.10

「絶対に負けられない」ヴァイオリン争奪戦

viotti01

 以前当ダイアリーの今年2月26日のエントリで、オークションに掛けられたストラディバリウス製ヴァイオリン「ヴィオッティ」(写真)のことを紹介しましたが、このヴァイオリンを今月2日に落札したのは、兼ねてからこの楽器の購入に意欲的だった英王立音楽アカデミー(RAM)でした。「ヴィオッティ」の前の持ち主だったスコットランド人は、この楽器を演奏させることなく80年間手許で保管していましたが、2年前に英国税当局に税金として物納され、それを国税局が競売にかけていました。

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2005.09.06

バレンボイムが「反ユダヤ主義者」と非難される

 指揮者・ピアニストのダニエル・バレンボイムが今月1日、エルサレムで彼の著書(エドワード・サイードとの共著)のサイン会を開きました。そのときイスラエル陸軍放送局の女性レポーターが近づきインタビューしようとしたところ、バレンボイムは彼女を無視してサインを続けました。それでもコメントを取ろうとしたレポーターに対して、バレンボイムは「軍服を着た兵士にはインタビューに応じることは出来ない。平服に着替えないと話をしないよ」と答えました。レポーターが「私は任務に就いているあいだは制服を着用する義務があります」と話すとバレンボイムは彼女の肩章を引っ張り、更に大声で怒鳴ったとの事です。
 このバレンボイムの行為に対しイスラエル国内で非難の声が上がっています。リモール・リヴナト教育相は「彼の行為は配慮に欠けるものだ」と非難し、さらに「彼はユダヤの敵で、真の反ユダヤ主義者だ」と厳しく断じました。

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2005.09.03

【レビュー】ルミニッツァ・ペトレのバッハ無伴奏

luminitsa_petre

(曲目)
1.バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番ト短調 BWV1001
2.同/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番ロ短調 BWV1002
3.同/無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番イ短調 BWV1003
(以上CD1)
4.同/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調 BWV1004
5.同/無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番ハ長調 BWV1005
6.同/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 BWV1006
(以上CD2)

(演奏)ルミニッツァ・ペトレ(ヴァイオリン)

 「作為のない演奏」という表現を時折批評欄などで見かけることがありますが、この演奏こそその言葉があてはまるかもしれません。感情的になることもなく、かといって冷徹にもならず、ペトレは黙々とバッハの自筆ファクシミリ譜をそのまま音にすることにのみ専念しています。甘すぎず辛すぎず、過度の味付けを一切排した楽譜に誠実な解釈には派手さはありません。
 しかしペトレの宝石のような輝きを放つヴァイオリンの響きが素晴らしく魅力的なので、音楽表現が無味乾燥に陥ることはありません。そのため聴き続けるにつれ確かな充実感が耳に残ります。どの曲も素晴らしいのですが、個人的には2枚目の3曲(BWV1004~1006)、特に「パルティータ第3番」(BWV1006)が好ましく感じられました。ここでの歌心あふれる楽想はペトレの持つ汚れのない純粋な響きとよく合います。有名な「シャコンヌ」(CD2;Track 5)でも過度に劇的になることを避けつつ、バッハの音楽に没頭することができます。それにしても、これほど虚心にヴァイオリンの音に耳を傾けることができる演奏はそう滅多にはありません。
 このCDはこれまで京都の「ラ・ヴォーチェ京都」でしか入手できませんでした(私も同店で購入しました)が、「レコ芸」誌での絶賛記事、そしてなにより愛好家たちの熱烈な支持を受けて通販サイト「アリアCD」でも入手できるようになりました。この見事な演奏を取り扱う店舗が増えたことは素直に喜ばしいことです。

(自主製作CD)

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2005.09.01

ぴあMOOK「2006来日クラシックのすべて」を読む

pia_2006classic 本屋で目立つところに並んでたのでつい買ってしまったのがこの「2006来日クラシックのすべて」(→amazon.co.jpbk1セブンアンドワイ)。付録DVDに今年の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の簡単なドキュメント映像があったので、つい「どこかに私が映ってないかな」と思いながら眺めてました(笑)。来年の同音楽祭(2006.5.4-6)についても少しだけ紹介されてました。テーマは既報の通り「モーツァルトと愉快な仲間たち」(一部管理人により勝手に改変:笑)ですが、スケジュール発表は今年10月下旬、チケット発売は来年2月4日だそうです。しかし先行発売の有無については記載されてませんでした。今年は先行発売のおかげで随分助かったので、今度も是非やって頂きたいのですが。それに来年は前売からチケット争奪戦になるんじゃないか、と心配してるのです。なにしろテーマが「モーツァルト」ですからね。全国から健康になりたい方々が大挙押し寄せるかもしれませんですので(※1)。
 

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