オルソップがボルチモア響の音楽監督に
アメリカ各紙によると、ボルチモア交響楽団は現地時間の昨日、新しい音楽監督にニューヨーク出身の指揮者マリン・オルソップ氏(48:写真)を選出することを正式に決定しました。これでオルソップは女性指揮者としては北米のメジャー・オケ初の音楽監督となるわけですが、選考過程での楽団役員と団員たちの間の激しい意見の対立が表面化し、彼女の前途は多難と言わざるを得ない状況です。
同楽団では、現音楽監督のユーリ・テミルカーノフが2006/07シーズン限りでの退任を表明し、後任を決めるに当たっては選考委員会が調査を続けていました。そんな中、数日前に「楽団役員側はオルソップを選出する意向だ」という情報が公になりました。すると団員側は、現音楽監督の任期を2年残した段階で後任を決めるのは「時期尚早だ」と反発し、決定を遅らせるようアピールを行っていました。報道では、団員側の実に9割がオルソップの音楽監督就任に反対しているということです。そして団員側はハンス・グラーフ、ビャーテ・エンゲセット、Juanjo Menaらといった他の候補者たちも検討するよう要求しています。
今回の対立の背景にはボルチモア響の労使協定があります。先日結ばれた新協定には団員側の強い意向により、「音楽監督を選ぶに当たっては、団員の意見を最大限尊重すること」という文面が書き加えられました。それにもかかわらず団員の意向が反映されない形で人事か決定しようとしていることも、反発の原因の一つと推測されます。
ところで団員たちがなぜここまで彼女を拒むのか、その理由は記事を眺めても今ひとつ鮮明には伝わってこないのですが、ある団員は「彼女がボルチモアに客演したときのチケットの売れ行きが今ひとつだった」と語っています。またこれまでの楽壇での所謂「大舞台」の経験が少ないことを問題視する声もあるようです。ここで思い切り私の主観込みのコメントをさせて頂くことを許して頂きたいのですが、もしかすると、彼女はナメられているだけなのかもしれません。
今回楽団側が(あえて団員のアピールを制するような格好で)発表したことにより、団員側の態度が硬化するすることが懸念されます。ただ少数派ながら彼女の手腕を評価する声も楽団内にはあったりするので、団員たちが一丸となって実力行使に出るのかどうかは今のところ不明です。ところでボルチモア響のケースでは、オルソップは団員の9割から「ダメ出し」を喰らったわけですが、上には上がいます。かつてクリーブランド管弦楽団の音楽監督にロリン・マゼールが就任したときには、同楽団内での彼の支持率はわずか2%だったということです…。
(参考)
Washington Post. BSO to Pass Baton To Marin Alsop (July 16, 2005)
Washington Post. Musicians Balk at Choice Of Baltimore Conductor (July 18, 2005)
New York Times. Baltimore Musicians Dissent on Conductor (July 19, 2005)
Washington Post. Baltimore Makes Musical History By Choosing Female Conductor (July 20, 2005)
New York Times. Baltimore Question: Can't They Get Along? (July 20, 2005)
Adaptistration(ボルチモア響問題について何度も触れているブログ)
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Comments
7月28日にBBC PROMSでボーンマス交響楽団というイギリスの地方オーケストラを振っていました。TV放送の録画を聴いた限りでは、とてもまともな指揮をする人ですが、レパートリーの点で楽団員が反対ということもありえますね。今回の曲目は、John Adams, John Corigliano, Prokofievと比較的新しいものでしたから。
しかしマゼールの支持率2%とは驚きですね。非常に若いときの話だったのでしょうか?
Posted by: dognorah | 2005.07.31 09:09