【レビュー】漆原朝子のブラームス:ヴァイオリンソナタ集
1.ブラームス/ヴァイオリンソナタ第1番イ長調 作品78
2.同/同第2番イ長調 作品100
3.同/「F.A.E.ソナタ」から スケルツォ
4.同/同第3番ニ短調 作品108
演奏:漆原朝子(ヴァイオリン)バリー・スナイダー(ピアノ)
昨年6月3日の神戸・松方ホールでの漆原さんのブラームスのソナタ全曲演奏会の模様は先日NHK-FMでオンエアされました。私も当ダイアリーで感想をupしたのですが、この演奏は私のお気に入りで、しばらくの間はCDに焼いて毎日のように通勤の車中で聴いていました。そんな中、この演奏会のライブ録音と称した新譜がフォンテックからSACDハイブリッドでリリースされました。もうすでに同じ演奏を持っていたとはいえ、このディスクはDSDレコーディングということで「FM放送より音質が向上しているかもしれない」と思い購入してみました。聴いてみると確かに音はラジオのオンエアのものとは異なって聞こえました。というよりまるで雰囲気が違って聞こえます。ピアノが右側、ヴァイオリンが左側から聞こえてくるのは一緒なのですが、2つの楽器の距離は、NHKの方がヴァイオリンがピアノの近くに立っているように聞こえます。そしてディスクの録音はものすごくピアノがクリアに録れていますが、ヴァイオリンの艶というか迫力はNHKの方があるような気がします。何度か耳で比較しながら私は「これは同じ演奏を違う機材、違うマイクで録ったのかな?」と思ったりしました。そして更に違いを詳しく調べようと思い、軽い気持ちで波形編集ソフトを使ってみたところ、ディスクの方の演奏にはライブとは全く異なる別テイクが含まれていることが分かりました。
2つの録音の各楽章別の演奏時間を測定してみました。ただこれは最初の音が鳴ってから、最後の音が聞こえなくなるまでの、いわば「正味」の時間ですので、ディスクのブックレットに書かれている時間表記とは異なります。
fontec盤 NHKオンエア
第1番 1st 11:22 11:12
2nd 7:21 7:14
3rd 8:46 8:21
第2番 1st 8:43 8:37
2nd 6:34 6:27
3rd 5:34 5:29
第3番 1st 8:22 8:20
2nd 4:26 4:25
3rd 2:54 2:53
4th 5:37 5:33
「第1番」と「第2番」はどの楽章もディスクの方が明らかに演奏時間が長くなっています。「第3番」は第3楽章まで演奏時間がほぼ同じですので、これは同一テイクかもしれません。しかし第4楽章になると演奏時間が長くなっています。ブックレットには「去年6月3日収録」と明記されているので、同じ日に客を入れずに収録した複数のテイクをマスターに使ったのでしょうか。まあ「ライブ録音」と称して実はライブじゃないテイクを使う、というのはメジャーレーベルのディスクにはよくあることなので、この件については個人的には「ああ、またか」という感想以上のものはありません。逆にNHKのオンエアを録音して手許に持っている方々は、ディスクが別テイクと分かれば購入意欲が湧いてくるかもしれませんね。
そんな残念な部分もありますが、ディスクに収録された漆原さんの演奏自体は、気品と節度を保った素晴らしいものです。ラジオを未聴の方は上記の件はあまり気にすることなく楽しめるのではないでしょうか。私もあまり目くじらを立てずに車中で流しています。
(フォンテック, FOCD9235, ASIN:B0009OAT26)
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Posted by: sacd_review | 2005.07.17 22:43