【レビュー】イヴァン・フイッシャーのラフマニノフ:交響曲第2番
まず本編の「交響曲第2番」ではなく余白に収められた「ヴォカリーズ」が素晴らしいです。ヴァイオリン・パートが感情に流されず節度を保ちながらあの有名な旋律を奏でるのですが、その音色が純度が高いというか、濁ったところがなくてクリアでありながら弦楽器特有の「艶」を十分に感じさせます。この質感は他の楽団ではなかなか聴くことができないものです。そしてこのヴァイオリン奏者たちによる一糸乱れぬポルタメントも気品があります。清楚でありながら艶やかな音で切々と歌われるメロディは心に染みます。
この特徴は「交響曲第2番」でも変わることがありません。第1楽章のテンポが速くなってからの部分でのヴィオラのトレモロの伴奏からして寒々とした質感を感じさせるのですが、これに艶やかなヴァイオリンの旋律が乗っかる様は見事です。
ヴァイオリンだけでなく、オケ団員の個々の力量は非常に高く、強奏部でも個々のパートが一定の力感を持って耳に伝わってきます。アンサンブルも安定していて、第2楽章や第4楽章の難所でもまったく危うさを感じさせず、ガッチリした構成力で聴かせます。これだけ統制の取れたオーケストラ演奏というのは、CD録音であってもなかなかお目にかかれないものです。これはやはり指揮者にしてこのオケの創設者のイヴァン・フィッシャーの努力の賜物ということなのでしょう。
(Channel Classics, CCS SA 21604, ASIN:B000216VPK, SACD(5.0ch&2ch)+CD-DA Hybrid)
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