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2005.06.15

「若手演奏家」って何歳までですか?

 「音楽現代」誌の最新号が若手弦楽器奏者を特集していたので、購読してみました。同誌では音楽ライター十余人が思い思いに「若手奏者」たちの名前を取り上げていましたが、彼らの挙げる名前がヴェンゲーロフだったり、ヒラリー・ハーンだったり、村治佳織だったりしたので、少々げんなりしながら読んでいました。

 といいますか、彼ら(彼女ら)のような既にネーム・バリューのあるアーティストを「若手」と呼ぶことに違和感を感じるのです。例えばサッカーだとルーニーとかカカとかカッサーノとかクリスティアーノ・ロナウドとかテベス(以下延々と続くので中略)とかを「若手」って呼ばないでしょ誰も。村治佳織さんはメジャー・デビューしてもう十年以上になりますし、CDのセールスも半端でないくらい凄くて、名の通ったロック・バンドよりも売れてるわけです。そのような既に業界内では大物のアーティストを「若手」扱いとは…。いやまあクラシック音楽の世界は奥が深いですから、いくら名が通っていようと20代、30代はまだまだ駆け出しの「若手」なのだ、ということなのでしょうか。このへんは落語家の世界と似てなくもないのですが、あちらは「前座→二つ目→真打ち」とキャリアを積むにつれランクがどんどん上がっていくわけで、ある意味分かり易いです。一方音楽家は協会公認のランキングというものが存在しませんから、どこからどこまでを「若手」と見るか、その線引きが難しいのは確かです。
 ところで今回、「音楽現代」誌が若手演奏家の条件として各ライターに提示した条件は「35才以下の演奏家」というものでした。なんかこの設定も無理があるような気がします。だって「35才以下」って(今回同誌で誰も名前を挙げなかった)五嶋みどりもこのカテゴリに入ってしまうわけで、かなり年齢設定が高いなぁ、というのが実感です。もしかしたら原稿依頼の段階で編集部はもう少し年齢設定を「30才未満」(サッカー風表現で「U-30」)とか「25才未満」(同「U-25」)とか、もう少し下に設定していたのかもしれませんが(ライター側から「それじゃあ原稿が書けないよ」と泣きが入ったりして)。
 かといってサッカーみたいに「若手演奏家」を年齢で定義するのも色々と難しいものがありそうです。「U-20」(20才未満)<例:木嶋真優ニコラ・ベネデッティリーズ・ドゥ・ラ・サール>は間違いなく「若手」でしょうし、20代の前半の方々<例:庄司紗矢香ラン・ラン>も「若手」と言って良いでしょう。しかし「U-30=若手」とすると、25才から29才までの演奏家が微妙になってくるような気がします。「音楽現代」誌で取り上げられたチェリストの石坂団十郎(先日の「1000人チェロ」にも参加しておられました)、そしてジャニーヌ・ヤンセンバイバ・スクリッドらは「若手」というイメージがしっくりくるのですが、前述の村治佳織やヒラリー・ハーン、更にはペッカ・クーシストもこのカテゴリに入ってくるわけで、このあたりの年齢層を全て「若手」と呼ぶのもどうかな、と思ったりします。まあ20代後半は「若手」と「中堅」の分水嶺、ということなのかもしれませんね。

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Comments

34才で亡くなったベルリーニも「永遠の若手」ですね。
ちなみに「坂本くん」はもう年齢上は「若手」を卒業してしまいました。でも全然風格が伴っていませんが(笑)。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.06.16 06:57

シューベルトは永遠の若手作曲家ですね。35歳以下なら。モーツァルトは、最後の1年だけ超えちゃったけれど、これも殆ど全生涯「若手」。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2005.06.16 02:05

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「若手演奏家」って何歳までですか? 微妙ですね。じゃあ中堅は何歳まで?って疑問も湧いてくる。”中堅”って言葉には”若手”にはない実力とかもたぶんに含まれている気がするし。 [Read More]

Tracked on 2005.06.16 12:03

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