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2005.06.08

【レビュー】ベスト・クラシック100

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 最近巷でバカ売れしている(「オリコン」誌6月13日付アルバムランキングで第5位)という、このコンピレーションCD。6枚組で3000円というお手軽感がウケているのでは、と言われているのですが、果たしてそうなのでしょうか。これまでも同様の企画は沢山ありましたし、その中でこれだけが売れたのには値段以外にもなにか秘密があるに違いない。そうだ、きっとある。そう思って私も1組ゲットしました。

 リストを眺めてみると、ワーグナー、ブラームス、ブルックナー、R・シュトラウスの曲を1曲もセレクトしてません。その一方でグノー、フランク、フォーレ、サンサーンスといった印象派以前のフランス音楽を積極的に取り上げています。そしてドビュッシーは1曲だけ(「月の光」)、ラヴェルは無しだったりします。「ベスト100」だからといって有名曲を漏らさず収録しているわけではない、というのがなかなかユニークですね。このあたりにセレクトしたスタッフの意図が現れていて、まるでiPodのプレイリストを眺めているときのように、セレクトした方の音楽的嗜好を想像してしまいました。
 とりあえず誰がセレクトしたのかはどこにもクレジットされていないので、選曲したスタッフをここでは「東芝惠美」さん(仮名)と呼ぶことにしますが、惠美さんはきっとバルビローリが好きに違いありません(笑)。バルビローリの指揮による演奏は6曲あるのですが、有名なシベリウスやマーラーだけでなく、「蝶々夫人」の二重唱や「グリーンスリーヴス」幻想曲といった、バルビローリの愛好家のあいだで名演と謳われている録音をセレクトしていて、なかなか渋いところを突いてきます。そして私も知らないようなヘンデルのオペラアリアの録音からも引っ張り出しています(「オンブラ・マイ・フ」)。
 さてざっと全6枚を聴いてみて、その中で一番楽しめたのはオペラ・アリアを多数含むDisc 3でした。1曲目がビゼーの「聖なる神殿の中で」(「真珠採り」から)なのは、最近デイヴィット・バーンがこの曲をカヴァーした(→「Grown Backwards」に収録)からでしょうが、ゲッダとブランによる男臭い二重唱がいいですね。そして私が以前愛聴していたルチア・ポップの「スラブ・オペラアリア集」から「月に寄せる歌」がピックアップされていたのも嬉しかったです。そして「カルメン」からは(「闘牛士の歌」でもなく「ハバネラ」でもなく)「花の歌」を取り上げていますよ。ここでも惠美さんは変化球を投げてきます。そしてアラーニャは「冷たい手を」では若き日のパヴァロッティを凌駕するには至っていなかったので少々落胆しましたが、アダンの「聖らに星すむ今宵」はよかったです。正直感動しました。それから6枚目の宗教音楽合唱曲集も、結構分厚いコーラスで聴かせる演奏が多くて、ざっと通して聴くとなかなかの迫力に圧倒されました。現在では聴くことができないような肉感的で重厚なバッハやヘンデルが聴けます。
 それ以外の個々の演奏で印象に残ったものを思いついたまま挙げていくと、メニューインのヴィヴァルディ「春」(なんと荘厳な!)、ルディ(ピアノ)ヤンソンス指揮によるラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」(寒々しい表現が印象的)、マリナーによる「パッヘルベルのカノン」とバッハ「(G線上の)アリア」(感情に流されない確実な音造り)、そしてやはりバルビローリのシベリウスでしょうか、
 総じてこれまでに例のないくらい独特な味わいのコンピレーションなのですが、曲の途中でフェイド・イン(またはフェイド・アウト)するのは、出来れば最小限に留めて欲しいな、と思います。「剣の舞」「ルスランとルドミュラ序曲」「熊蜂は飛ぶ」などのアッという間に終わる小品をたくさん収めれば、もっとカットしたりせずに済ませることも出来たのでは、と思うのですが、以上に挙げた曲はセレクトされず、ヴォーン=ウィリアムスの「揚げひばり」の後半部とか、ブルッフの「ヴァイオリン協奏曲」の抜粋とかも入れていたりします。この辺の惠美さんのセレクションの仕方ってホントに面白いですね。多分惠美さんはヴァイオリンも好きなんでしょうね(笑)。
 個人的にはノーカット収録にはもっと拘って欲しいのです(全楽章収録する必要はないですよ。キリのいいところで終わって欲しい、という意味です)。困難なことだとは思いますが、それさえクリアできればもっと素晴らしい内容の、本格的なコンピレーションになったと思うのです。東芝EMIでは「ベスト・クラシック100」に続いて「ベスト・ピアノ100」と「ベスト・モーツァルト100」の発売を予定しているので、これら第2弾、第3弾ではこのあたりを頑張って頂きたいです。ピアノ曲は小品が多いですから、今回のよりはハードルは高くないと思われますが。それからこのセットの好セールスの秘密は、結局最後まで解らずじまいでした(笑)。
(東芝EMI, TOCE-55721/6, ASIN:B0007TFC8O)


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Comments

こんばんは。
確かにジャッキーはおろか、チェロの曲は1曲もありませんね。東芝惠美さんはチェロがヴァイオリンほどお好きじゃないようですね(笑)。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.06.10 at 18:58

こんにちは。
面白い分析です~^^
東芝恵美さん(仮名)は
サー・ジョン・バルビローリが好きに
違いないですか・。
恵美さん(仮名)(笑)と同じように
自分もサー・ジョンが大好きなので
このアルバムに興味があります

でもねえ・・
もう1人の大好きなジャッキーが
いない。。

恵美さんは、チェロが嫌いなんでしょうかねえ
(TOT)

サー・ジョンは、元はチェリストだったのに・・

ジャッキーも収録のなかに
入れて欲しかったミーハーな
ファンです・・

Posted by: dokichi | 2005.06.10 at 07:23

こん○○は。
「オンブラ・マイ・フ」は某ウイスキーの広告でしたね。
確かに重々しくて「現代風」とはいえないような演奏が多いので、惠美さんはそんな昔の演奏に精通した、人生経験豊富な方なのかもしれませんね。
今日も車の中で聴いてましたけど、なんか面白い選曲してるんですよね。なんでここで「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」なのか、なんで「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」なのか(しかもカラオケ)、そしてベートーヴェン作の数曲は決まって大胆なカットが施してあったりとか。まあいろんな意味で興味深い選曲です。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.06.08 at 21:46

オンブラマイフって、何かのTVCM?で一時爆発的に流行りましたよね。もう10年以上前かもしれませんけれど。だから、emiさんは結構人生経験を経た方ではないかと想像します。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2005.06.08 at 04:41

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