【レビュー】ニコラ・ベネデッティ&ハーディング指揮ロンドン響のシマノフスキ他
(曲目)
1.シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番 作品35
2.サンサーンス:ハバネラ 作品83
3.ショーソン:詩曲 作品25
4.マスネ:タイスの瞑想曲
5.ブラームス(ハイフェッツ編):メロディのように 作品105-1
6.タヴナー:処女(おとめ)のための断章(新作)
7.マスネ:タイスの瞑想曲(カラオケ・トラック)
(演奏)
ニコラ・ベネデッティ(ヴァイオリン:1-6)ダニエル・ハーディング指揮ロンドン交響楽団
メジャー音楽グループ・ユニヴァーサル傘下のDGレーベルと破格の契約を結んだばかりのニコラ・ベネデッティ(Nicola Benedetti)のデビュー盤はまずまずのお披露目となったようです。といいますかこれまで当ダイアリーで幾度も取り上げた手前、「これだけ盛り上げておいて演奏内容が伴わなかったらどうしよう…」と内心ビクビクしていたのは事実です(苦笑)。個人的にはホッとしたというのが正直なところです。
あくまでこのCDを聴いた限りでの印象ですが、ベネデッティのヴァイオリンはフルーティでフレッシュ、一言でいうと瑞々しい音色です。そして音質には一定のボリューム感があり、音は凄みを感じるほどの重さはないものの、線が細い印象はありません。ベネデッティは多彩なプログラムの全般を通じて伸びやかに弾いていて、そこからは良い意味での若々しさを感じます。そんな彼女の特徴はトラック6の「タイスの瞑想曲」やトラック7のブラームスに一番現れています。
ただメインであるシマノフスキの協奏曲を聴くと、このアルバムでまず評価されるべきなのは彼女以外の奏者のような気がします。この曲は私が初めて耳にする曲ですが、ストラヴィンスキーの「火の鳥」やらスクリャービンやらの影響を多分に感じさせる「協奏曲」というよりは単一楽章の交響曲のような作品です。ハーディングとロンドン響は劇的でありながら神秘的で繊細な部分もあったりするこの曲の多彩な曲想に合わせて、ドラマティックで変幻自在の表現を見せています。そして楽器間の音の響きのバランスも良く、クリアな音を聴かせています。そんなオケに対して独奏者も前述の瑞々しい音色で相対し、結果的にこの曲を官能的なものにしています。タブナーの新作はまさにタヴナー的な作品ですが、シマノフスキを始めとする他のトラックと比べると、やや聴き劣りしてしまうのは仕方がないでしょうか。
全般的には好ましい印象を与えたこのCDですが、ベネデッティの真価を知るには今回のような総花的なプログラミングよりも、もっとヴァイオリンがリードするような作品を聴いてみたいです。それこそ彼女の希望する古典名曲で真っ向勝負を期待します。さて「伴奏」とは口が裂けても言えない見事な演奏を聴かせたハーディングの指揮を更に楽しみたい人のためなのかどうか、最後のトラックには「タイスの瞑想曲」のカラオケ・バージョンが収録されています。ヴァイオリンをたしなまれる方は暇なときに楽しまれてはいかがでしょうか。ちゃんと楽譜もネットで用意してくれています(pdfファイル。1ページ目&2ページ目)。
(DG,987 057-7, ASIN:B0007MYK8Y)
(7/26追記)ついに日本盤が発売されますね(ユニヴァーサル・クラシック/UCCG-9646。9/14リリース)。上記ジャケ写をamazon.co.jpにリンクしましたので、よろしければどうぞ。
The comments to this entry are closed.
Comments