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2005.05.18

「クラシックジャーナル」誌を読む

 バッハの「無伴奏チェロ組曲」のCDの集中レビューがあるというので「クラシックジャーナル」誌の最新号を購入して読んでみましたが、その記事以外がなかなか充実した内容だったので感想を述べてみたいと思います。

 石原主筆のレビューは以前より好ましく感じられました。文体に心なしか硬さが取れ、表現はより簡潔になり、なおかつ直接的になっています。それだけ全体的に分かり易くなったような印象で、CDの中に込められた音がどんなものなのかもきちんと丁寧に述べられています。そして良い演奏のレビューには、その文章から「熱気」のようなものを感じます(これが大事なのです)。思わず読後にCDを何枚かアマゾンにオーダーしてしまいました。自己主張がより一層強くなった分、本題から逸脱する場面も散見されますが、政治的主張についてはまあいいでしょう。私は「題名のない音楽会」で免疫が出来ていますから(笑)。
 しかし東京のオケの統廃合案(pp.24)にはげんなりです。演奏がうまい人達を集めれば優秀なオケが出来ると本気で思っているのでしょうか。他の事例に置き換えれば、極東の某国のサッカーの名手を集めたチームは「代表」の名にふさわしいプレーを見せているのでしょうか。クラシック音楽の世界に話を戻すと、以前東欧の某大国では政変後に優秀な奏者を多数引き抜いて新しいオーケストラが結成されましたが、彼らの生み出す音楽には厳しい意見が多いように思います。東京に沢山のオケが林立することは決して雇用対策などではなく、各オケが切磋琢磨し競い合うことに意味があると思うのです。個人的には世界最高レベルの管弦楽団が日本に出来るにはまだまだ「時間」が必要かと考えますが、私は将来を悲観していません。これについてはまた別の機会に述べることにします。
 レビュー以外ではまず「オザワ・ストーリー」(山田治生著)が興味深かったです。内容自体は淡々と史実を丁寧に追うという比較的地味な内容なのですが、行間からは小澤征爾の日本音楽史でのポジションが鮮やかに浮かび上がってきます。若き小澤は病気のために桐朋学園短期大学(当時)の卒業が遅れ、療養中に一足早くデビューしたライバル達(岩城宏之、外山雄三)の活躍を複雑な思いで見つめます。そして「ジェラシー」を心に秘めた小澤が、師匠の斎藤秀雄の猛反対に抗する形で欧州行きの貨物船に乗ったことが記されています。小澤が渡欧した1959年当時はヨーロッパに行くこと自体が困難だったわけで、それでも周囲の反対を押し切って自らの信じる道を進んでいった小澤の生き様には、なんとなく野茂英雄のそれとダブるものがあります。普段ナンダカンダ云われることが多い小澤ですが、彼の先駆者的な活動がなければ、日本人は今でもヨーロッパで仕事がしにくかったかもしれません。
 そして深良マユミ氏の「尽くせぬ思い ショスタコーヴィチと私」も面白く拝見しました。著者は非常に熱心なショスタコ・マニアなのですが、彼にまつわること全てに関心を持った著者は、「交響曲第5番」の有名なフィナーレの冒頭部を使用したテレビCMがどの会社のだったか、直接メーカーの広報部に問い合わせたりもしたそうですが、結局正解は得られなかったようです。ここで私の記憶の奥底を掘り起こしてみます。これはトヨタの「スプリンター・トレノ」のCMで使われてましたね。そしてオンエア時期ですが、これは深良氏の指摘よりも10年くらい新しい、1980年代後半ではなかったかと思います。丁度その頃はクラシック音楽をCMのBGMに使用するのが流行ってた時期だったと記憶しています。
 ここでCM音楽としてのクラシックについて、更にコメントしたくなったのですが、続きはまた今度ということで…。

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Comments

坂本さま
ありがとうございます。「血湧き肉躍る」、本当にその言葉がぴったり来ますね!あの曲のフレーズは♪
しかしながら、この「交響曲第5番」の謎(というか、私の自己チュウな追憶だが)は、編集長も探してくださっているのですが、はかばかしくないのです。こうなると「自動車のCM 」ではないのだ、と考えるしかなさそうです。それこそドラマのBGM かもしれません。コンサートに行く様な高尚な趣味嗜好の家庭じゃなかったので(笑)テレビで流れていたのを覚えたのでしょう。
何のバックに流れていたのでしょうか?食べ物CM ってことはないですよね…それはさておき、CM 音楽としてのクラシックって、大変深いテーマですね。書き方によっては壮大な文化論にさえなりそうです。坂本様らしいピリリとしたご意見を楽しみにしていますので、いずれは是非。

Posted by: 深良マユミ | 2005.05.19 23:31

深良マユミ様こんばんは。こちらこそ楽しい文章をありがとうございました。私、「坂本くん」もレパートリーは雑食系ですので。この間は知人宅で落語を一席まるまる聴いておりました(笑)。
ところでCMの件ですが、私が例に挙げた車のCM以前に、「交響曲第5番」を使用したCMがあったのかもしれませんね。これについてはどこかで徹底調査して頂きたいですね。と書いているうちに、CMではなくて「部長刑事」というドラマシリーズの主題歌がこの曲だったことも思い出しました。
それにしてもあの「ドンドンドンドン」といい金管の咆哮といい、あの音楽はいつ聴いても理屈抜きに血湧き肉躍りますね。そんなところがテレビなどで引用されるゆえんでしょうか。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.05.19 21:38

「おかか1968」ダイアリーの筆者様
コメント頂きましたふからです。暖かいご感想をありがとうございます。心から御礼申し上げます。
あはは、私が「熱心なショスタコ・マニア」と言われる日が来るとは昨年の今頃は思っておりませんでした。ロックでもジャズでも長唄でも聴いちゃう人間でして…
さて、80年代後半に「スプリンター・トレノ」のCM で「交響曲第5」が使用されていたとのこと。逆に、私はそのことを全く知りませんでした。そうでしたか…
(ちなみに80年代後半、私は大学を出たかでないか、の年齢)しかしながら、自分の中の「感じたこと」ってのは自分には絶対のモノなので、やはり私は「小学生の頃のあの曲だ」としか信じられないのですねえ。第4楽章の終結部ではなく、ティンパニの「どんどんどんどん♪」とともにやってくる金管のユニゾンですわ!!
あ、長くなりまして申し訳ありません。これからもよいレビューをお書きくださいね。本日はありがとうございました。

Posted by: 深良マユミ | 2005.05.19 19:32

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