« 【レビュー】マイケル・ティルソン・トーマスのマーラー「交響曲第9番」 | Main | ラダメスが「本当に」閉じこめられそうになる »

2005.04.08

【レビュー】5(ファイヴ)ブラウンズ

5browns

1.R=コルサコフ:熊蜂の飛行
2.バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」から
3.デュカス:魔法使いの弟子
4.ラヴェル:ラ・ヴァルス
5.フリードマン:音楽玉手箱
6.ラフマニノフ:「楽興の時」から 作品16-4
7.ラフマノノフ:エレジー
8.ドビュッシー:喜びの島
9.プロコフィエフ:ピアノソナタ第3番
10.ボウエン:トッカータ
11.グリーグ:山の王の宮殿にて

演奏:ファイヴ・ブラウンズ
<ディジリー・ブラウン(1-4,11)、デオンドラ・ブラウン(1-4,11)、グリゴリー・ブラウン(1-3,7,10,11)、メロディ・ブラウン(1-3,5,8,11)、ライアン・ブラウン(1-3,6,9,11)(ピアノ)>

(7/9追記:最近輸入CD店にファイヴ・ブラウンズの同名のアルバムが並んでいるのをよく見かけますが、CD店の担当者によると、それらはCD-DAシングル・レイヤーの商品だということです。よって以下の文章にあるようなCDプレーヤーに対する問題は起こらないものと思われます。そのことにご留意の上で、4/8にupした以下のエントリをご覧頂ければ幸いです。)

 まずこのディスクは個人的には非推薦盤であることを強調したいと思います。これは最近アメリカで発売されるようになった「DualDisc」なるフォーマットで作られています。このディスクは片面がCDで、もう片面がDVDという構造になっています。「A面はCD、B面はDVD」といった方が分かり易いでしょうか。ただ最近は不具合の報告も出ており、多くのCDプレイヤーでの動作保証もされていません。私も実際に自家用車のカーオーディオ(スロットローディング方式)で試してみましたところ、音はちゃんと出ましたが、ローディングのあと「キュキュキュ…」というヤな感じのメカノイズがしたので、正直壊れたと思いました(苦笑)。そんな「故障するんじゃないか」と余計な心配をしてしまう「規格外」のディスクは(CCCDと同様)あまりおすすめしたくはないのです。それでもあえてこのディスクをご紹介するのは、演奏する「5ブラウンズ(The Five Browns)」がアーティストとしてとてもユニークだからです。

 ますこの5人組は「ピアノ五重奏」です。といってもピアノと弦楽四重奏ではなくてピアノ五台編成です。そして(ここからが驚きなのですが)このグループは男性2人、女性3人の5人からなる兄弟姉妹で構成されています。クラシック音楽界ではクイケン兄弟、チョン・トリオなどが音楽一家として有名ですが、5人兄弟姉妹のグループというのは私の記憶の限りでは例がありません。というかこのテのグループは「ジャクソン5」とか「フィンガー5」などを連想してしまいます(笑)。ついでにいうと5人のうち4人がジュリアード音楽院の卒業生、または現役学生です。
 これらの興味を引く要素に加えて、ビジュアル面でもなかなかのグッドルッキングな5人組のファースト・アルバムは「ビルボード」誌の最新クラシック・チャートでトップになった(参照)のですが、彼らの音楽には昨今流行りの「クラシック」とは名ばかりの音楽的なモノにはありがちな派手なだけのキーボードやリズムボックスは含まれておらず、100%ピアノ・サウンドで構成されています。そしてラフマニノフやプロコフィエフに交じってフリードマンの「音楽玉手箱」、ヨーク・ボウエンの「トッカータ」などの交じったプログラミングは、いかにもピアノ愛好家が好みそうなもので、何だかアマチュアのピアノ・サークルの発表会を連想させます。
 そんな感じで「クラシック」のカテゴリから逸脱しない彼らの姿勢には好感を抱きつつも、彼らのウリのピアノ5台のレパートリーには若干魅力に乏しい部分もあります。「熊蜂の飛行」は「なんだかハチが増えたなぁ」という以上の感想はなかったですし、「魔法使いの弟子」も期待されたスケール感を生み出してはいなかったようです。その一方で「ウエストサイド・ストーリー」での軽快な演奏は素直に楽しめましたし、「山の王の宮殿」はピアノ5台による重音がまるでトーン・クラスターのような凄みを聴かせていたものの、グランド・ピアノ5台でやるんだったらもう少しシンフォニックでダイナミックな曲の方が聴き映えがしたかな、と思いました。
 ただブラウン・ファミリーの個々のメンバーは、ピアニストとして確かなものを持っているようです。各メンバーのソロ演奏はどれも技巧的にも安定していましたし、音楽的にも一定水準以上の表現力を聴かせています。特にフリードマンとドビュッシーの「喜びの島」を弾いたメロディ(三女:20)に一番可能性を感じました。
 このアルバムはアメリカで好評のようなので、おそらく第2弾もあるでしょう。そのときはピアノ五台をフル活用した華やかさを持った、正に「ピアニスティック」な演奏を聴かせて欲しいと思います。
(RCA Red Seal, 82876660072, ASIN:B0006HHU5A)
(4/9追記)このアルバムは「ビルポード」のクラシック・チャートで8週連続No.1に輝いたそうです。

|

« 【レビュー】マイケル・ティルソン・トーマスのマーラー「交響曲第9番」 | Main | ラダメスが「本当に」閉じこめられそうになる »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 【レビュー】5(ファイヴ)ブラウンズ:

« 【レビュー】マイケル・ティルソン・トーマスのマーラー「交響曲第9番」 | Main | ラダメスが「本当に」閉じこめられそうになる »