【レビュー】木管アンサンブル「アフラートゥス」のベートーヴェンとモーツァルト
1.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番ヘ長調 作品18-1(木管四重奏版)
2.同:笛時計のためのアダージョとアレグロ WoO.33
3.モーツァルト:自動オルガンのためのファンタジー・ヘ短調 K.608
4.同:自動オルガンのためのアンダンテ・ヘ長調 K.616
5.同:自動オルガンのためのアダージョとアレグロ・ヘ短調 K.594
演奏:アフラートゥス・クァルテット
ロマン・ノヴォトニー(フルート)ヤナ・ブロジュコヴァー(オーボエ)ヴォイチェフ・ニードゥル(クラリネット)オンジェイ・ロスコヴェッツ(ファゴット)
チェコ・フィル、プラハ室内フィルなどの団体に所属するチェコの木管楽器の名手からなるアンサンブルの最新アルバムは、ベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第1番」の木管四重奏版をメインとするプログラム。4つの管楽器の豊かでまろやかなサウンドが存分に楽しめます。
「弦楽四重奏曲第1番」(作品18-1)はオリジナルの弦楽四重奏と比較して管楽器の音色の方が明るくて丸みがあるので、曲全体がソフトに感じられます。そのせいかどうかはわかりませんが、聴いている方はすごくリラックスできます。シリアスで緊張感あふれる第2楽章では険しさというよりは甘くてほろ苦い雰囲気がしますが、他の3つの楽章では喜遊曲的な楽想と各楽器の妙技が楽しめます。弦楽だと眉をひそめた作曲家の肖像画がどうしても思い浮かぶのですが、管楽器だとベートーヴェンは微笑んでいるように感じられます。残りの4曲はいずれも自動オルガンのための作品からの編曲。こちらも作品18-1と同様、艶やかで柔らかな管楽器の音色の魅力が楽しめます。
独断を承知で個々の奏者に対する印象を述べさせて頂くと、フルートのノヴォトニーの音には落ち着きを併せ持った輝きがあります。インナーノートによると彼の楽器は18Kのムラマツということです。そう言われて改めて聴いてみると「確かにムラマツっぽいかな」という気がしますが、私は管楽器については素人ですのでこの類の話は馬脚を露す前に止めておきましょう(笑)。オーボエのブロジュコヴァーは素直でありながら芯のある音(この音を出すのが大変なのですが)。クラリネットのニードゥルの柔らかい音はこのアンサンブルの音色の方向性を決めていたような気がします。そして4人の中で一番目立っていたのがファゴットのロスコヴィッツ。至る所で存在を誇示しています。特にトラック3の作品18-1の第3楽章は聞き所です。
録音もリアルで、各奏者の音色もダイレクトに伝わって来ます。定位も確かで、奏者がどこで演奏しているかも明瞭に感じ取れます。総じて聴く者をリラックスさせながら、木管楽器の魅力を十二分に伝えるこのディスクはマニアだけではなく初心者にも十分楽しんで頂けると思います。
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Comments
>これと同じプロをアフラートゥスで聴きたいな
本当に!!
その一文でレポを閉めようかと思ったのですが、ウィーン=ベルリンの演奏会の感想なのにそれは非礼かと思い削除したのでした(笑
Posted by: ユウスケ | 2005.04.20 16:02
こんばんは。実はユウスケ様のサイトの「アンサンブル・ウィーン=ベルリン」のライブのレポを拝見させて頂いておりました。私は「これと同じプロをアフラートゥスで聴きたいな」と思いながら見てましたが(笑)。
ところで弦楽四重奏を管楽でやると確かにイメージは変わるんですけど、こんなに耳に馴染むとは、まさに「想定の範囲外」でした(笑)。でも最終的には彼らの演奏でライヒャを全曲聴いてみたいですね。
Posted by: 「坂本くん」 | 2005.04.19 21:30
おおっ、アフラートゥスの新作が出たのですか!
管楽五重奏のコンサートの感想を拙ブログに書き込んだ直後にこれはよいレビューをありがとうございました。でもオクタヴィア、高いんだよなあ…というかアメリカで売ってません(涙
>フルートのノヴォトニーの音には落ち着きを併せ持った輝きがあります。
私もまったくそう思います。シュルツは、彼に比べると、ムニャムニャ…
出来れば編曲ものではなく、ライヒャのクインテットを24曲全曲とか、オリジナル曲を録音してもらいたいなあとも思うのですが、デビューアルバム(お聞きになられましたか?)の弦楽四重奏《アメリカ》の編曲がかなりツボにはまったので、今回のアルバムも楽しみです。
Posted by: ユウスケ | 2005.04.18 10:46