【短期連載】熱狂の日を求めて(3)
今日も「ラ・フォル・ジュルネ」会場の東京国際フォーラムには長蛇の列が出来ている。係員は最後尾で「120分待ち」と書いたボードを持っていた。もはやスプラッシュマウンテン並である。
ところでこの音楽祭は3歳未満の小児の入場制限があるが、これは逆に「3歳以上はご遠慮なくどうぞ」ということでもある。実際小さい子供をたくさん会場で見かけるのだが、レジス・パスキエ、ジェラール・コセらによる室内楽コンサートでこんなことが起こった。
フンメルの「ピアノ五重奏曲」が始まろうとしたまさにそのとき、ホールの端のほうから「ばあ〜〜」と子供らしき人の声が響きわたった。そのノイズに抗しきれずパスキエは弾く構えを止めてしまった。一瞬会場内に緊張が走る。そのときチェロのゴーティエ・カプソンが突然ブラームスの「子守歌」のサワリをチラッと弾いた。これでどっと会場は大爆笑に包まれた。カプソンの機転に救われた一瞬だった。
それにしてもビオラのコセの音色はこれまで聴いたことの無い位良い音をしてた。「これを旧カザルスホールで聴きたかったなあ」と思ったのは内緒だが(笑)、いいものを聴かせて貰った。