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2005.04.30

【短期連載】熱狂の日を求めて(3)

今日も「ラ・フォル・ジュルネ」会場の東京国際フォーラムには長蛇の列が出来ている。係員は最後尾で「120分待ち」と書いたボードを持っていた。もはやスプラッシュマウンテン並である。
ところでこの音楽祭は3歳未満の小児の入場制限があるが、これは逆に「3歳以上はご遠慮なくどうぞ」ということでもある。実際小さい子供をたくさん会場で見かけるのだが、レジス・パスキエ、ジェラール・コセらによる室内楽コンサートでこんなことが起こった。
フンメルの「ピアノ五重奏曲」が始まろうとしたまさにそのとき、ホールの端のほうから「ばあ〜〜」と子供らしき人の声が響きわたった。そのノイズに抗しきれずパスキエは弾く構えを止めてしまった。一瞬会場内に緊張が走る。そのときチェロのゴーティエ・カプソンが突然ブラームスの「子守歌」のサワリをチラッと弾いた。これでどっと会場は大爆笑に包まれた。カプソンの機転に救われた一瞬だった。
それにしてもビオラのコセの音色はこれまで聴いたことの無い位良い音をしてた。「これを旧カザルスホールで聴きたかったなあ」と思ったのは内緒だが(笑)、いいものを聴かせて貰った。

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2005.04.29

【短期連載】熱狂の日を求めて(2)

結局当日券を求める行列は終日続いた。この様子なら明日あさっての、特に午前9時代のコンサートを希望される場合は早めに会場に並んだ方が良いかもしれない。
それにしても今日は多くの人出でごった返していた。そのせいか夕食時には特設ホイリゲレストランに食べるものが無くなっていたし、みやげ物コーナーも売り切れアイテムが続出した。それでもたくさんのご婦人方が品定めをする姿が見られた。普段の演奏会とは違う客層の人たちがこんなにベートーベングッズを嬉しそうな顔をして買っていくとは驚いた。
ネオ屋台村で買ったパエリアをほおばりながら大型スクリーンを眺める私の向かい側には、普段ならコンビニの前でじべたで座っているのではと思ってしまうような格好の若者が、私と同じように大型画面を眺めている。運営上の問題は色々とあるのかもしれないが、コンサートホールに好んで近寄らない人たちを、しかもベートーベンの名の下にこれだけ集めたという時点で、この音楽祭は成功したといえるのではないだろうか。

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【短期連載】熱狂の日を求めて(1)

LaFolleJournee001

ということで夜行バスに乗って東京国際フォーラムにやって来た。会場では私の予想に反して当日券売場の前には朝早くから長蛇の列(写真)ができていた。しかも小さい子供を連れたお母さん達が多くて目立つ。「ラ・フォル・ジュルネ」は新たなファン層を呼び込むことに成功しているようだ。
と思ったらチケットカウンターが人数に比べて少ないせいか最初のコンサートに間に合わない方が多数出てしまった。「責任者出てこい!」とスタッフに怒鳴る方も多数。

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2005.04.25

「指揮者vs楽団員」の対立がオレゴンでも

 オレゴン交響楽団の首席ソロ・フルート奏者のDawn Weiss氏は去年の秋に同楽団の音楽監督のカルロス・カルマーから手紙を受け取りました。その手紙には彼女に対するカルマー氏の不満が6つ書かれていました。その6つとは

1.吹き間違い
2.ピッチが不正確
3.リーダーシップの欠如
4.フレーズにムラがある
5.リハでの調子を実演で発揮してくれない
6.浮ついていて不快な音色

というものです。手紙にはこれらを改めなければ今年のシーズン終了後に契約更改をしないことも記されていました。

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2005.04.24

「ラ・フォル・ジュルネ」公式ガイド

pia_mook 公式ガイドブックを本屋で見かけたので購入してみました。これを読んでみると今日からもう既にイベントが始まっている(参照)らしいですね。首都圏に在住の方は一足お先に楽しめていいですね(笑)。周辺会場ではシャネルでコンサートやったり(4/28まで)、更には帝国ホテルで舞踏会もやるんですか(5/1)。ちょっとこれは私には縁がなさそうですね(笑)。
pp.112-113には「ベートーヴェンゆかりの作曲家たち」と称してベートーヴェンの同時代人の写真が並んでいましたが、リースとライヒャの写真はこれと同じでしたね(笑)。一方フンメルのは写りの良い肖像画を引用してました。これは名を成した大人物の風格があふれていて、私が採用したメランコリックな眼差しのものよりは良いですね(笑)。
内容はインタビューに続いて、全コンサート、全アーティスト、演奏される曲全ての紹介と盛りだくさんです。ただ私のようなひねくれ者は、曲紹介のところで各ライターが取り上げている推薦盤のチェックをついしてしまいます。中には「え~~!、なんでソレなの~」というものもありますが、気合いを込めて書いている方もおられますね。特にハイドンの「交響曲第104番」にチェリビダッケ盤を推した松沢憲氏と、古楽ものを積極的に紹介している安田和信氏が目に付きました。でも安田さんが廃盤になっているものまで紹介している(ライヒャの「木管五重奏曲第2番」)のはこの音楽祭の趣旨を考えると「どうかな」と思いますが。
でも私はこの本を見て初めてプログラムの全貌が把握できました。名作の「ヴァイオリンソナタ第10番」と「ディアベッリ変奏曲」を誰も取り上げないことも初めてこの本で知ることができました(まあ「フィデリオ」がないのは良いでしょう)。ともあれ非常に読みやすいムックですので、私はこれを常時抱えて会場内をうろうろすることになるでしょう。

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2005.04.23

東京国際フォーラムに「ベートーヴェン市場」オープン

 いよいよ開幕まであと7日となった「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」ですが、会場の東京国際フォーラムでは早くも祭りを盛り上げるべく「ベートーヴェン市場」が開設されています(参照)。肖像画の展示、CD即売を始め、ワインコーナー、ホイリゲレストランなど、「食」も充実しています。写真で見る限り、ホイリゲのスタッフもなかなか粒ぞろいの模様です(笑)。土産物コーナーはTシャツ、ストラップ、キーホルダーなどのオリジナルグッズで一杯です。私も上京&来場の際には是非立ち寄りたいと思います。特にホイリゲの「最高級のハモンイベリコベジョータ」に期待します(笑)。

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女性音楽家3人を題材にした映画が製作される

wunderkind_trilogy

 先日オランダの映画製作会社Ventus Filmが、18世紀から19世紀に実在した女性音楽家たちの生涯を描いた映画を順次製作すると発表しました(参照:英語)。先ずレオポルド・モーツァルトの娘でヴォルフガング・アマデウスの姉、ナンナル(写真左)を主人公にした「The Wonder Child」が今年冬に製作されます。これに続いてクララ・シューマン(写真中)とファニー・メンデルスゾーン(写真右)の映画も予定されています。この三部作のメガホンを取るのはHeinrich Dahms氏、プロデューサーのペーター・ファン・フォーゲルポール氏はラース・フォン・トリアーの映画「奇跡の海」をプロデュースした方です。
 女性ばかりを主人公にした三部作というのは私の知る限りこれまでなかったものなので、この企画は目を引きますね。彼女たち3人はいずれも優れた音楽的才能を持ちながら、高名な兄弟(あるいは夫)の影に隠れる存在だった、という共通点を持っていますが、この3人をどのように描いていくのか、映画の完成を楽しみに待ちたいと思います。
 ところで音楽家を主人公にした映画は枚挙にいとまがないのですが、やはり一番メジャーなのはミロス・フォアマンの「アマデウス」でしょうか。それ以外でもケン・ラッセルの「マーラー」、ジェラール・ドパルデューがマラン・マレに扮した「めぐり逢う朝」(アラン・コルノー監督)なども有名ですね。このテの映画でのマイ・フェイバリットはヤナーチェクの一生を描いた「白いたてがみのライオン」です。しがない田舎者の音楽教師が「イェヌーファ」の上演をきっかけに運命が好転し、カミラ夫人とのダブル不倫(それにしてもなんで「カミラ」なんだ…。偶然の一致にしては恐ろしい)を経て創作意欲がより旺盛になる様が、デフォルメなく自然に描かれています。やや破格ともいえる人生を送ったヤナーチェクですが、彼の心の動きに素直に感情移入できるのは、きっとよく書けた台本だからでしょう。現在DVD、ビデオともに廃盤なのが残念です。


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2005.04.17

【レビュー】木管アンサンブル「アフラートゥス」のベートーヴェンとモーツァルト

1.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番ヘ長調 作品18-1(木管四重奏版)
2.同:笛時計のためのアダージョとアレグロ WoO.33
3.モーツァルト:自動オルガンのためのファンタジー・ヘ短調 K.608
4.同:自動オルガンのためのアンダンテ・ヘ長調 K.616
5.同:自動オルガンのためのアダージョとアレグロ・ヘ短調 K.594

演奏:アフラートゥス・クァルテット
ロマン・ノヴォトニー(フルート)ヤナ・ブロジュコヴァー(オーボエ)ヴォイチェフ・ニードゥル(クラリネット)オンジェイ・ロスコヴェッツ(ファゴット)

 チェコ・フィル、プラハ室内フィルなどの団体に所属するチェコの木管楽器の名手からなるアンサンブルの最新アルバムは、ベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第1番」の木管四重奏版をメインとするプログラム。4つの管楽器の豊かでまろやかなサウンドが存分に楽しめます。

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イギリスにも大音量で音楽を垂れ流す女性がいた

 最近奈良県で隣家へのいやがらせとしてCDラジカセから洋楽R&Bをガンガンに流していた女性が逮捕されましたが、洋の東西を問わず似たようなことは起こるもので、先日イギリスでも音楽を昼夜を問わず鳴らし続けた74歳の女性が近所の住民から訴えられました。ただこの老女が流していたのはセックス・ピストルズやクラッシュなどのUKパンクではなく、クラシック音楽だったといいます。
 ランカシャー州のカーンフォースに住むこの老女は、10年前に夫を亡くしてから近所の住民が敵対心を持っているという疑念を抱き始め、それに対抗するためにクラシック音楽を終日大音量で流すようになりました。彼女の問題行動はこれに留まらず、自治体に隣人たちを告発する手紙を送ったり、近所の人が自宅の前を通る度に「痴漢!」とか「売春婦!」といった侮蔑の言葉を掛けたりしたといいます。地元の警察、ソーシャルワーカー、精神科医が介入しようとしましたが彼女はこれを拒み続けたため、騒音や迷惑行為に悩まされていた近所の住民はやむなく起訴することにしました。そして一昨日ランカスターの裁判所は彼女に対して住民への暴言や騒音行為を禁止するように命じました。
 ただ近所の住民や関係者は今回の件について「やむを得ない処置だった」、「高齢者にこのような事してしまって後悔している」と語っていて、高齢で精神障害の可能性のある人物に対して法的処置を取ったことは彼らにとって苦渋の決断だったようです。この辺りの周囲の反応は日本での類似の事件とは少し異なるようですね。
(参考)
Times Online. Court bans classical fanfare with ASBO on woman of 74 (April 16, 2005)

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2005.04.13

最近聴いたアルバムから3つを

ピュアなクラシック以外の音楽レコードから面白かったものを3つ紹介させて頂きます。

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2005.04.10

ラダメスが「本当に」閉じこめられそうになる

 私だけでなく世界中の音楽ファンの注目を集めているコペンハーゲンの新歌劇場「オペラァン」ですが、そこで今月5日に「アイーダ」の上演中にセットが崩壊するという事故が発生しました。地下室のセットの一部がラダメス役のデイヴィット・レンドールの上に覆い被さる形で落ちてきたのです。そのとき舞台上は真っ暗で、明かりになるようなものはレンドールの持つ蝋燭(ろうそく)しかない状態で、彼が気づいたときには既にセットは崩れるところで、彼は為す術もなく叫び声とともにセットに押しつぶされてしまいました。
 幸いにもレンドールはケガをせずに済みましたが、彼はショックの余り舞台には戻れず、この日の公演はここで終了となりました。多くの読者は既にご存じかと思いますが、「アイーダ」の最終幕ではラダメスは生き埋めにされてしまいます。そんな場面でラダメスがセットの下敷きになり、本当に生き埋め状態になったのですから、当人の驚きは相当のものがあったと思います。最近のオペラのセットには凝ったモノが多いですから、今後このような事故が起こらないように安全にはこれまで以上に気を配って欲しいですね。
(参考)
New Kerala. Operatic tenor literally brings house down(8 April, 2005)
PlaybillArts. Collapsing Set Brings Copenhagen Aida to a Halt (10 April, 2005)

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2005.04.08

【レビュー】5(ファイヴ)ブラウンズ

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1.R=コルサコフ:熊蜂の飛行
2.バーンスタイン:「ウエスト・サイド・ストーリー」から
3.デュカス:魔法使いの弟子
4.ラヴェル:ラ・ヴァルス
5.フリードマン:音楽玉手箱
6.ラフマニノフ:「楽興の時」から 作品16-4
7.ラフマノノフ:エレジー
8.ドビュッシー:喜びの島
9.プロコフィエフ:ピアノソナタ第3番
10.ボウエン:トッカータ
11.グリーグ:山の王の宮殿にて

演奏:ファイヴ・ブラウンズ
<ディジリー・ブラウン(1-4,11)、デオンドラ・ブラウン(1-4,11)、グリゴリー・ブラウン(1-3,7,10,11)、メロディ・ブラウン(1-3,5,8,11)、ライアン・ブラウン(1-3,6,9,11)(ピアノ)>

(7/9追記:最近輸入CD店にファイヴ・ブラウンズの同名のアルバムが並んでいるのをよく見かけますが、CD店の担当者によると、それらはCD-DAシングル・レイヤーの商品だということです。よって以下の文章にあるようなCDプレーヤーに対する問題は起こらないものと思われます。そのことにご留意の上で、4/8にupした以下のエントリをご覧頂ければ幸いです。)

 まずこのディスクは個人的には非推薦盤であることを強調したいと思います。これは最近アメリカで発売されるようになった「DualDisc」なるフォーマットで作られています。このディスクは片面がCDで、もう片面がDVDという構造になっています。「A面はCD、B面はDVD」といった方が分かり易いでしょうか。ただ最近は不具合の報告も出ており、多くのCDプレイヤーでの動作保証もされていません。私も実際に自家用車のカーオーディオ(スロットローディング方式)で試してみましたところ、音はちゃんと出ましたが、ローディングのあと「キュキュキュ…」というヤな感じのメカノイズがしたので、正直壊れたと思いました(苦笑)。そんな「故障するんじゃないか」と余計な心配をしてしまう「規格外」のディスクは(CCCDと同様)あまりおすすめしたくはないのです。それでもあえてこのディスクをご紹介するのは、演奏する「5ブラウンズ(The Five Browns)」がアーティストとしてとてもユニークだからです。

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2005.04.03

【レビュー】マイケル・ティルソン・トーマスのマーラー「交響曲第9番」

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 サンフランシスコ交響楽団(SFSO)の自主製作によるマイケル・ティルソン・トーマス(MTT)指揮のマーラーの交響曲の演奏です。以前からこのコンビのマーラーは何曲かリリースされてますが、私が聴くのはこの「第9番」が初めてです。彼のマーラーのレビューは結構頻繁にネット上で目にしていましたが、それらの評判から伺える彼のマーラー演奏のスタンスというものが、どうも私の好みとズレているような気がしたので、これまでは手を出さずにいました。しかしこのCDのリリースの情報を見て、個人的にも思い入れの強い「特別な曲」でもある「第9番」をMTTがどう演奏するかを早く知りたくなり、SFSOのサイトから直接購入してみました。おかげで店頭に並ぶより早く手に入れることが出来ました。

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