【レビュー】「春の生け垣は緑」(エリサベト・マイヤー=トプセー デンマーク語歌曲集)
(曲目の詳細については「ノルディックサウンド広島」のサイトにあるニューズレターをご覧下さい)
演奏:エリサベト・マイヤー=トプセー(ソプラノ)ペル・サロ(ピアノ)
エリサベト・マイヤー=トプセーは地元コペンハーゲンを始め欧州各地の歌劇場で活躍するソプラノ歌手です。彼女のデビューCDとなった、R・シュトラウスの「最後の4つの歌」などが収録されたアルバム(Kontrapunkt, Cat.#:32156)は英「グラモフォン」誌でオペラ評論家のアラン・ブライス氏(日本で言えば高崎保男氏のような存在か?)に激賞されました。私はついそのレビューにつられて購入したのですが、確かに彼女の声の深みを伴った力強さには惹かれるものがありました。その声質はワーグナーを歌うに適したもので、実際彼女はセンタ(「さまよえるオランダ人」)やエリザベート(「タンホイザー」)などをレパートリーとしています。
そんな彼女によるクーラウ、J・P・E・ハルトマン、ハイセ、ゲーゼ、ランゲ=ミュラーらの作曲したデンマーク語の歌曲のアルバムを購入してみました。一聴して「少し歌曲を歌うには声が重いかな」と思いましたが、聴いていくうちに深みのある声に慣れていきました。このアルバムに収録されているのは殆ど知られていない曲ばかりですが、シンプルで親しみやすいものばかりなので抵抗感なく聴き進むことができます。曲の幾つかはシューベルト的な雰囲気を持っています。トラック4の「子ヒバリの春の歌」は「ます」を連想させますし、トラック9の「ひとりの騎士がさまよっている」のイントロを聴いて「冬の旅」の第1曲を思い起こすのは私だけでないでしょう。またシューベルトよりも古い時代のドイツ歌曲のような端正な曲も多いような気がします。しかしこのアルバムに関してはデンマーク語だからとか、リーダーだからとあまり小難しいことを考えたりせず、ただ部屋に流してゆったりとたのしむのが吉かと思います。それにしてもこれらの歌曲、良い曲なのにこれまで有名にならずにいたのはやはり言葉の問題が大きいのでしょうね。デンマーク語は「世界で一番発音が難しい」ていう人もいるくらいですし。北欧には名歌手も多く、女性ではアンネ・ゾフィー・フォン・オッターや若手のミア・ペションもいますが、彼女たちの歌唱でこれらの歌曲も聴いてみたいな、と思ったりもしましたが、隣国のスウェーデン出身の彼女たちにとってもデンマーク語は難関なのでしょうね。
(Danacord, DACOCD 625)
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