【レビュー】鈴木秀美 バッハ「無伴奏チェロ組曲」再録音
<CD1>
1.バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007
2.同/同第3番ハ長調BWV1009
3.同/同第5番ハ短調BWV1011
<CD2>
4.同/同第4番変ホ長調BWV1010
5.同/同第2番ニ短調BWV1008
6.同/同第6番ニ長調BWV1012
演奏:鈴木秀美(チェロ)
1995年の録音から10年をおいてのバッハ「無伴奏」の再録音。鈴木さんご本人も「こんなに早く再録できるとは思っていなかった」とライナーノートに書かれておられますが、たしかに私も発売のプレスリリースを見たときは「あれ?」と意外な印象を持ちました。このディスクを手にするまでは「ビルスマみたいに楽器を替えて録音でもしたのかな?」と思ってたのですが、どうやら前回と使用楽器は同じもの(胴体の装飾が美しい1570年頃のアマティ)のようです。となると10年前と違う部分がどこにあるのか、前回録音と比較したくなるところですが、最初のうちは敢えてそれをせずに聴いてみることにしました。
一聴して楽器の音の響きがすごく豊かに捉えられているのが分かります。特に低音部のC線の開放弦の音が(「第3番」の「クーラント」などで)充実していて耳に残ります。かといって響きだけでなく実音もはっきりと捉えられているので、芯のある音を感じることができます。そんな響きの良さもあってか鈴木さんの表現には「広がり」というか「余裕」が感じられます。滑らかな弓運びも心地よく、角が取れたというか、柔らかさも聴き取れます。全6曲で一番楽しめたのは「第4番」。この曲のおおさかな曲想が今回の鈴木さんの演奏に一番合っていたような気がします。その一方で個人的に好きな「第5番」や「第2番」では深刻さを充分に表現していました。全体を通して違和感を覚えることなく聴き通せましたが、「第6番」のガヴォットで見せた幾つかの遊び心には驚かされました。装飾音の付け方や弾き方のせいで、バッハというよりまるでマラン・マレに聞こえました。この辺を良しとするかどうかは聞き手の好みが分かれるところかもしれませんが、私は楽しめました。
何度か聴き通したところで鈴木さんの10年前の旧録音も取り出してみましたが、録音はやはりDSD方式の新録音に軍配が上がるようです。解釈面でも風格を感じさせる新録音の方が私にま好ましく感じられます。
(BMGファンハウス,BVCD-34028/9,
ASIN:B0007N36Q0,SACD(4.0ch/2ch)&CD-DA Hybrid)
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Comments
こんばんは。
NHKでもやってましたね、鈴木さんのライブ。今録画したものを引っ張り出して見てますが、手持ちの楽譜に書いてあるのと全然ボーイングが違いますね。映像付きだと確かに色んな「発見」がありますね。
演奏は新録音CDと若干の違いも感じられますね。「第3番」の前奏曲はCDだとややゆったり目でしたけど、ライブはかなり飛ばしてますね。ということでCDを買えば、ライブとの表現の違いを楽しむこともできそうですね。
Posted by: 「坂本くん」 | 2005.03.31 23:09
はじめまして、アマチュアちぇろ弾きのya-ya-maと申します。
秀美さんの新録音でたんですね♪
半年くらい前に、NHKのBSで彼の無伴奏の全曲演奏会を放送していましたが、とても勉強になりました。ビルスマなどとはまた違った、素朴な美しさを引き出した演奏のように思え、あたらしい発見が多かった感じがします。
学生時代に秀美さんのCDを聴いたときは、彼の演奏はどうも物足りなさをのようなものを感じていたのですが、新録音の無伴奏、ぜひ買ってみたくなりました!
Posted by: ya-ya-ma | 2005.03.31 01:22