« あのオペラ歌手がダイエットに成功 | Main | 【レビュー】鈴木秀美 バッハ「無伴奏チェロ組曲」再録音 »

2005.03.29

失われたコンサートマスターの地位への怒り

 幼稚園児からおじいちゃんまで、ニートからお金持ちの社長まで、誰も彼もブログを持つ時代ですが、クラシックのアーティストのブログも最近増えてきましたね。そしてみなさん面白い文章で私たちを楽しませてくれます。昔から「優れた音楽家は文章もうまい」と言われていますが、これはブログにも言えることかも知れません。
 ところでシアトル交響楽団(SSO)のコンサートマスターを20年間務めたフィンランド出身のヴァイオリニスト、Ilkka Talvi氏のブログ(英語)が英語圏で話題になっています。このサイトは今月20日に開設されたばかりなのですが、その過激な内容で地元の音楽関係者は戦々恐々です。ここのブログのエントリのあちこちにはSSOの音楽監督のジェラード・シュワルツを始めとする地元音楽界に対する批判が、まさに情け容赦なく展開されています。

 まずは彼の最初のエントリ(3月20日付)から。

 「自分の目の前の指揮台に立ってる才能のない興ざめな人物と何十年も共に過ごすという拷問を想像してみて下さい」

 いきなり穏やかでない表現ですね。そしてその翌日(3月21日付)のエントリを読めば「なるほど、そういうことか」と読者は納得させられることになります。実はTalvi氏は昨年一方的にSSOから解雇を言い渡さたのを不服とし、楽団側と係争中なのです。彼は解雇の理由として、昨年のSSOの演奏会が不評に終わったことを挙げ、「楽団側はスケープゴートを探し始めた。そして私がそのスケープゴートにさせられた」と述べています。さらにSSOの低調の原因は音楽監督にあるとし、シュワルツに批判的なレビューを自らの別のブログで引用しています。ちなみにそのブログのタイトルは「裸の王様(Emperor Has No Clothes)」と言います…。
 このような強烈な批判にSSOも黙っていませんでした。やはりSSOの団員であるTalvi氏の妻を解雇したのです。これに対して彼は「私のクビを2度切ることは出来ないから、妻のクビを切った」と述べています。ここまでくるともう「○ジ対ライ○ドア」といい勝負というか、骨肉の争いといった感じですね。
 以後のエントリもシアトルの音楽界に対する批判で満載ですが、中でも興味深いエピソードを一つだけ紹介します。彼によるとシアトルに新しく建てられたコンサートホール、Benaroya Hallも(他のコンサートホール同様)落成当初から音響面の問題を抱えています。3月25日付のエントリにはこうあります。
 「最初のリハーサルのときは気が狂いそうになったのを憶えている」「音量は耳をつんざくほどだったが、どこから楽器の音が鳴ってるのかが全く分からない状態だった。そしてすぐに舞台上の奏者がお互いの音を全く聞き取れないことも分かった。私はまるでヨーロッパの有名な大聖堂で演奏しているように感じたけれども、(打楽器群、金管楽器、ホルン、そしてコントラバスまで)後方の楽器が以前よりも少なくとも十倍以上騒々しく聞こえた。多くの団員が耳栓を使用することを余儀なくされ、これは現在でも続いている。そして最初の演奏会が開かれると。奇妙な現象が起こることが分かった。ホールは確かに良い響きだったが、指向性が逆だった。つまりプログラムを落とす音や咳といった、客席のありとあらゆる音が非常に明瞭に舞台に伝わるのだ。携帯電話の着信音はソリストの音よりもよく伝わり、聴衆が口笛を吹いたりすると(ここではよくあることだ)その音はピッコロを圧倒した。」
 Talvi氏はこの責任はホール建設計画の責任者の一人だった音楽監督のシュワルツにもある、としています。そして「この件に対する批判は許されなかった」と楽団寄りの地元音楽界やマスコミにも批判の矛先を向けています。
 彼の毒舌に対しては「なにもここまで」と思わなくもないですが、ついにクラシック音楽のブログにも過激さをウリにするものが登場したか、といった感もあります。ともあれ彼のブログは暫くウォッチすることにしたいと思います。

|

« あのオペラ歌手がダイエットに成功 | Main | 【レビュー】鈴木秀美 バッハ「無伴奏チェロ組曲」再録音 »

Comments

>ガーター亭亭主様
当事者にしては、

かくあらねばならないか?
その必要はいささかもなし。

といったところかもしれません。
エントリのタイトルについては、いつも一生懸命考えてるわけではなく、自然に任せてます。けっこう気まぐれなんです(笑)。

>ユウスケ様
Talvi氏の胸の内は知る由もありませんが、彼のブログを読むと、揺らぎない信念の人だというのが自然に伝わってきますね。端から見ろと「嫌なら辞めれば?」とも思ってしまうのですが、「正しいはこっちなのだから譲らない」という彼の態度も分からなくもないです。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.03.31 at 22:29

> 確かにTalvi氏はシュワルツが連れてきたコンマスで、音楽監督が在任中は辞めることができない、という契約になっているようです。
やはりそうなんですか。ありがとうございます。だとすると、いつどうして仲が悪くなったのか、気になりますね。タルヴィ氏は首を切られなかったとしても、シアトルで気に入らない仕事を続けたかったのでしょうか…。謎です。

Posted by: ユウスケ | 2005.03.31 at 17:39

しかし、連れてきた人だったのに不倶戴天の敵になってしまった、というわけですか。

かくあらねばならないか?
かくあらねばならない。

ってとこでしょうか。

ところで、タイトルに凝られていますね、ここのところ。私も真似してみましたが、ちょっと懲りすぎたかも。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2005.03.30 at 21:59

こんにちは。
就任が2人同時だったかどうかは分かりません(すみません)が、確かにTalvi氏はシュワルツが連れてきたコンマスで、音楽監督が在任中は辞めることができない、という契約になっているようです。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.03.30 at 07:28

おかかさんこんにちは。シュウォーツは最近評判芳しくないですね。そういえば、シアトルでは新しい音楽監督が就任すると新しいコンマスを連れてくるのが慣わしで、云々というのを以前どこかで読みました(おかかさんのところだったかも、すいません)。Talvi氏がその人だったのかな。

Posted by: ユウスケ | 2005.03.30 at 03:39

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24023/3485877

Listed below are links to weblogs that reference 失われたコンサートマスターの地位への怒り:

» コンサート・マスター [鎌倉・スイス日記]
コンマスについて、おかかダイヤリーで興味深い記事があった。知り合いのコンマスとしては、名古屋フィルの日比浩一氏や神戸フィルの福富博文氏などが思い浮かぶ。他に矢部... [Read More]

Tracked on 2005.03.31 at 11:56

« あのオペラ歌手がダイエットに成功 | Main | 【レビュー】鈴木秀美 バッハ「無伴奏チェロ組曲」再録音 »