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2005.03.18

【レビュー】カタン作曲 オペラ「アマゾンのフロレンシア」

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<配役と演奏>
フロレンシア(オペラ歌手)…パトリシア・シューマン(ソプラノ)
リオロボ(アマゾンの精霊)…マーク・S・ドス(バス=バリトン)
ロサルバ(ジャーナリスト)…アナ・マリア・マルティネス(メゾソプラノ)
アルカディオ(カピタンの甥)…チャド・シェルトン(テノール)
アルバロ…エクトル・バスケス(バリトン)
パウラ(アルバロの妻)…スザンナ・ガズマン(メゾソプラノ)
カピタン(船長)…オレン・グラダス(バス)
パトリック・サマーズ指揮ヒューストン・グランド・オペラ管弦楽団
/同合唱団

 ある日いつものように「orchestra」とか「opera」とかのキーワードでググっていたら気になる記事を見つけました。シアトル歌劇場では「フロレンシア」という新作オペラが人気(参照:英語)となり、「再演して欲しい」というリクエストに応える形で今年再演することになったというのです。どんなオペラか気になったのでCDをアマゾンで購入してみましたが、理屈抜きに楽しんで聴くことができました。

 作曲家のダニエル・カタン(Daniel Catán)は1949年メキシコシティ生まれですが、「フロレンシア」の叙情性とオーケストレーションはプッチーニを連想させます。しかしマリンバや太鼓などの打楽器の使用により、舞台となるアマゾンのジャングル奥地のエキゾチックな雰囲気が適度に感じられます。そしてこのオペラは随所で伝統的なオペラが持つ「声」の快楽を充分に味わうことができます。特に主人公のフロレンシアが自らの身の上を歌う最初のアリア、そしてオペラの最後となる彼女の長大なアリアは圧巻です。
 このオペラの簡単なあらすじは情報サイト「Junglecity.com」の内のシアトル・オペラ公演情報で見ることが出来ますが、重要なキャラであるアマゾン川の精霊「リオロボ」には触れられていません。「リオロボ」は劇中いろんな場面に登場します。嵐で船が制御不能となると風を鎮め、波に呑まれた乗客を生き返らせたりもします。神秘体験はタイトルロールのプリマドンナにも訪れます。最後の場面でバタフライ・ハンターだった昔の恋人との出会いを叶えることができないと知ったフロレンシアがその思いを歌うと、彼女自身が恋人が追い求めていた珍しい蝶「エメラルド・ミューズ」(ジャケ写になっている蝶のことです)に生まれ変わるのです。これらのアマゾン奥地のミステリー、そして乗客たちの恋の行方を織り込んだ台本は、見る者が感情移入しやすいようにできています。このあたりもこの新作オペラの人気の秘密となっているのかも知れません。
 このCDは2001年のヒューストンでの公演のライブ録音ですが、タイトルロールのパトリシア・シューマン(この方、以前NHKでオンエアされたシュベツィンゲン音楽祭の「ポッペアの戴冠」では妖艶な演技と歌唱を見せてましたね)を初めとするキャストは、アマゾンの世界をわたしたちに十分堪能させてくれたと思います。
(Albany,TROY 531/32, ASIN:B00007IG3O)
(追記)この公演時の舞台写真はここで見ることが出来ます。

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