【レビュー】ジャニーヌ・ヤンセンの「四季」
ヴィヴァルディ:「和声と創意への試み」作品8より 協奏曲集「四季」
1.協奏曲ホ長調RV269「春」
2.協奏曲ト短調RV315「夏」
3.協奏曲ヘ長調RV293「秋」
4.協奏曲ヘ短調RV297「冬」
演奏:ジャニーヌ・ヤンセン(ソロ・ヴァイオリン)キャンディーダ・トンプソン、ヘンク・ルービング(ヴァイオリン)ジュリアン・ラクリン(ヴィオラ)マールテン・ヤンセン(チェロ)ステイシー・ワットン(コントラバス)エリザベス・ケニー(テオルボ)ヤン・ヤンセン(オルガン、ハープシコード)
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私事ですが最近某所でヴィヴァルディの曲を練習しておりまして、その際指導をされたチェロの先生が「これはヴィヴァルディですから。そんなにヴィヴラートを一杯掛けないで下さい。ロマン派みたいに弾かないで」と仰いました。この先生は普段から特に古楽演奏をなさってる方ではないようなのですが、そんな方でもピリオド奏法に一定の理解を示しているのを体験した一瞬でした。
そんな練習の翌々日にたまたま店頭でこのジャニーヌ・ヤンセンの「四季」を見かけました。彼女の演奏は未体験でしたが存在自体はあさがら様を始めネット上の評判を通じて知ってましたし、若い女性演奏家に目がない私は「今更どうして『四季』なのかな」と思いつつも購入しました。彼女は来日公演ではメンデルスゾーンやチャイコフスキーの協奏曲を披露していたようなので、イタリア・バロックでもあまり時代考証に囚われず自由に自分の持ち味を出すのかな、と初めは予想していましたが実際はピリオド奏法を積極的に取り入れていたので少し驚きました。このCDをiPodに取り込んで「これオランダで最近結成された古楽アンサンブルの演奏だよ」といって聴かせたらみんな信じちゃうかもしれません。そういった控えめのヴィヴラートとか独特のフレージングなどのピリオド奏法を取り入れつつも、音色には明るい輝きがあり、激しく細かいパッセージなどでは確かな技巧も見せてくれます。彼女のようなモダン奏法の奏者がピリオド奏法をものにするとこうなるのかな、という一例を聴いた気がします。彼女は古楽が盛んなオランダ出身ですし、そういう勉強もどこかで受けていたのでしょうか。
ただこのCDではヤンセンはあくまで8人編成の一員で、彼女と同様ピリオド的な奏法の他の7人と共にアンサンブルとして一体化した表現を見せています。そしてヤンセンとそのファミリー、そしてソリストとしても活躍中のラクリン(なぜここに!?)を含むアンサンブルの古楽寄りの姿勢は、曲全体の解釈にも表れています。彼らは「四季」の曲の性格に合わせて大胆なまでに音色の変化を付けています。明朗な「春」と快活な「秋」はヤンセンの明るい高音の響きが全開ですが、「夏」での合奏の倦怠感の表現と硬質なフォルテは両隣の楽章との対照を際だたせています。また凍えるような「冬」の冒頭部では「四季」のキテレツ演奏の極北といえるイル・ジャルディーノ・アルモニコばりのスル・ポンティチェロを聴かせます。ラストの「冬」の第3楽章では全員の一糸乱れぬアンサンブルが見事です。
ということでこのCDはヤンセン一人を聴く、というより8人編成のアンサンブルの妙味を楽しむCDのような気がします。彼女の個性を知るには、もっと彼女がプリマドンナを演じられるような曲でないと、という印象を持ちました。今度メンデルスゾーンの協奏曲がBS2で放送予定ですから、それを聴いてみることにしましょう。そしてピリオドアプローチを取り入れたこのCDを聴きながら冒頭のエピソードを思い起こし「古楽演奏はアーティストの間では完全に既成概念になったのかな」と思いました。
(ユニヴァーサル/DECCA UK,
UCCD-1132, ASIN:B0006TPH08(CD-DA).
475 618-8,ASIN:B0007PL7WI (SACD/CD-DA Hybrid; 2005年3月発売予定) )
(以上レビュー終わり)
それにしてもおじさんはジャニーヌの「きれいなお姉さん」ぶりにメロメロですよ。セクシーショット満載のブックレットはヴィヴァルディのCDであることを忘れてしまいそうです。ジャニーヌ自身のコメントや奥田佳道氏の解説を読もうにも彼女の艶姿の方にどうしても目がいっちゃって困るので、もうこんなつくりのCDを作らないで下さい(笑)。
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Comments
こんばんは。
コンセルトヘボウ管と結構共演していたんですね。この公演の模様が日本でもオンエアされると良いのですが。
Posted by: 「坂本くん」 | 2005.02.15 21:34
遅くなりましたが、ほぼ同じメンバーによると思われるライヴについて書きました。
WebRadioですと映像がないので、演奏に集中できます(笑)
Posted by: あさがら | 2005.02.14 14:50