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2005.02.24

観客のマナーを巡るアメリカのブロガーたちの議論

 1つ前その少し前のエントリで、演奏会場での観客のリアクションについて触れたのですが、情報源の殆どがアメリカのクラシック音楽系のブログです。最近の私は2号店のネタ探しのためにこれらの英語のブログをネットサーフィンするのが日課となっています。アメリカでは自らの意見を率直に述べるコラム系のブログが多いようです。そしてブロガーたちはトラバやコメントなどで熱心なやりとりを重ねています。そんな中で飛び出したのが、楽章間の拍手の是非をめぐる論争です。

 この議論の先鞭をつけたのが先日の私のエントリのネタ元にもなったAlex Ross氏のブログです。Ross氏はまず1月10日のエントリで、あるコンサートで楽章間に拍手が起こるとすかざすそれを制する「シー!」が飛んだが、そのときピアニストが突然マイクを取りトークを始めたのでよい気分転換になった、というエピソードを紹介し、「こんな自由な雰囲気が今のコンサートにもっと欲しい」と演奏会場でのエチケットに対する違和感を正直に告白しました。
 そして1月24日のエントリではモーツァルトの手紙を紹介しています。自作の「パリ」交響曲の演奏会のとき「アレグロ楽章の丁度中間部に皆が楽しめると思ったパッセージがあって、そこで観客たちはどっと沸いた」「最後に向かう辺りでもう一度そのパッセージを織り込んでいたんだけど、その部分になるともう一度観客は拍手してくれた」などと、当時のコンサート会場が現在のジャズ・クラブに近い雰囲気だったと述べた上で「最近のコンサートの雰囲気をモーツァルトはどう思うだろう?」と問題提起しました。そして2月13日のエントリでRoss氏はピアニストのエマヌエル・アックスの「堂々とした曲調で終わる楽章の後でも客席が静かだと違和感を感じる」という趣旨の意見を取り上げています。このようにRoss氏は、演奏会中の拍手などに対しもっと観客が積極的になってもいいのでは、という主張を何度も自らのブログで行っています。
 これに対するブロガーの意見には賛否両論があります。Drew McManus氏は2月17日にズバリ「私は楽章間で拍手するし、やりたくなったらブーイングをする("I'll Clap Between Movements And Boo If I Want To")」というタイトルのエントリで「わたしの考えでは楽章間の拍手はアリ」と述べています。
 一方Marcus Maroney氏は2月15日のエントリで「私はコンサートはより静かな方が楽しめます。楽章間の拍手よりも静かな方が楽しめます」という意見です。彼は「"LISTEN"(聴く)という言葉を並び替えると"SILENT"(静寂)になる」というアルフレート・ブレンデルの言葉を引用しています(ブレンデルに座布団一枚:笑)。この翌々日のエントリでは同氏は「私は絶対ブーイングしません」とも述べたあと「良い演奏家は楽章と楽章の間の結びつきとか、曲全体をどうドラマチックに構成するかとかそういうことを考えるべきです。拍手は良いノイズとは思いません」とコメントしています。またPatricia Mitchell氏はこのエントリで「私は好きな音楽を聞くと静かになってしまいます」「私は卒倒してしまうような音楽が好きなのです。私はそんなときは喝采を送るよりもむしろ静かにしていたいです」と述べています。
 私は心情的にはRoss氏に近いのですが、より静寂を好む方々の意見にも一理ありますのでディベートとしてどっちに軍配を上げるべきか迷うところです。ただ日本ではあまりこういう類の議論は見かけなかったような気がしますので、いろいろなエピソードとあわせて興味深く拝見しておりました。
(リンク先は全て英語)

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Tracked on 2005.02.24 08:04

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