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2005.02.28

NHK-FM 2005年3月の放送予定

 まだ寒い日々が続いていますが、日の昇っている時間は一日一日と長くなっています。サッカーシーズン開始を控え、スカパーの「Football Kingdomセット」(通称腹筋セット)に加入し準備に余念のない「坂本くん」です。
 さて話題を変えて、3月のNHK-FMの予定をリストアップします。今月は「プロムス2004」をやりますよー。さーて、今回のプロムスさんはー…。3/14はアイヴスの「交響曲第4番」と「ペトルーシカ」という、演奏者にはさぞキツかったのではと思われる組み合わせ(Prom 11)。3/15は「未完成」のあとブルノ・チェコ・フィルハーモニック合唱団が参加の「グラゴル・ミサ」(Prom 16)。3/16はサー・コリン・デイヴィス指揮の「戦争レクイエム」(Prom 22)。これ聴きたかったんですよ個人的に。3/17はブロンフマンのピアノによるプロコフィエフの「ピアノ協奏曲第2番」とチャイコフスキー「交響曲第5番」(Prom 50)。3/18はサイモン・ラトル&ベルリン・フィルのドビュッシー「海」とメシアン「彼方の閃光」(Prom 68)。古楽は見事にスルーということであさがら様は残念でした…。そもそも80以上もある演奏会から5つだけを選ぶのですから、ファン全員が満足するセレクションは不可能でしょう。全部やれとはいいませんが、もう少しオンエアできませんでしょうか<NHK様。

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2005.02.27

英EMI 最後のオペラのスタジオ録音!?

 2月25日付の「フィナンシャル・タイムズ」紙に気になる記事(英語)を見つけました。きになる部分だけ引用;

"....Production costs for a live recording of a standard symphony can be as low as £15,000, compared to £45,000 for a studio version. For an opera recording such as EMI’s Tristan und Isolde with Placido Domingo, due out in July, the bill runs to something like £250,000. On that basis, studio-based opera recordings don’t make sense any more - and it comes as no surprise to learn that Tristan will be EMI’s last. The future for opera is DVD."

 この前半の「交響曲をスタジオ録音で収録するとライブ録音の3倍費用がかかる」「現在進行中のドミンゴの『トリスタン』の経費は25万ポンド(約5千万円)」というのはいいとして、その後の文章が引っかかります。「この『トリスタン』がEMIの最後の歌劇のスタジオ録音になる」みたいに書いてあるじゃないですか!EMIの前身の「ザ・グラモフォン・カンパニー」の最初のエンジニア、フレッド・ガイスバーグが1902年にミラノでカルーソーの声を吹き込んでから約100年、オペラ・レコーディングの歴史は一大転換点を迎えることになるのでしょうか。これはただ事ではありませんね。さきほど東芝EMIにはこの報道が事実かどうか確認のためメールを送りました。

(2/28追記)
東芝EMIから返事が来ました。「トリスタン」が最後のスタジオ録音か、という点についての公式見解はありませんでしたが、上記の新聞報道を覆すようなコメントは返信メールからは見つけることができませんでした。今後は「完全にDVDに一本化する」というドラスティックなことはせず、ライブ録音で収録したテープを用いてCD化する可能性は残されているようです。
最後になりましたが、この場を借りて東芝EMI株式会社の担当の皆様の迅速な応対に心から御礼を申し上げます。
(6/28追記)HMV.co.jpの方にドミンゴの「トリスタン」の発売予告が出ましたね。

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2005.02.26

「ストラディバリウスを守れ」とイギリス音楽界が動く

 現在1挺のアントニオ・ストラディバリ製作のヴァイオリンがクリスティーズの倉庫で競売にかけられるのを待っています。実はこのヴァイオリン、ただのヴァイオリンではありません。こう書くと「だってストラディバリウスじゃん」とツッコミを受けそうですが、このストラディバリウスはただのストラディバリウスではありません。他にはない歴史的価値、そしてストラディバリウスの歴史上とても重要なヴァイオリンなのです。

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2005.02.25

「楽章間の拍手」をもう一度(そして事件は東京で起こっていた)

 「CLASSICA」経由で来られた方々も含めて皆様こんばんは。iio様のサイトで紹介して頂いてからアクセス数がもう大変なことになっております。改めて「CLASSICA」の影響力の大きさに驚くばかりです。読者の皆様には心から御礼を申し上げます。
 さて今日はこれまでの拍手関連のネタの補足をちゃっちゃと済ませて、先日行われたシカゴ響の公聴会の話題を取り上げる予定でしたが、そのシカゴ響の音楽監督でもあるバレンボイムのピアノによる「平均律クラヴィーア曲集第1巻」の演奏会(サントリーホール:2/13)で、まさに今回のテーマに関係する大事件が発生していたことを今日知りました。

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2005.02.24

観客のマナーを巡るアメリカのブロガーたちの議論

 1つ前その少し前のエントリで、演奏会場での観客のリアクションについて触れたのですが、情報源の殆どがアメリカのクラシック音楽系のブログです。最近の私は2号店のネタ探しのためにこれらの英語のブログをネットサーフィンするのが日課となっています。アメリカでは自らの意見を率直に述べるコラム系のブログが多いようです。そしてブロガーたちはトラバやコメントなどで熱心なやりとりを重ねています。そんな中で飛び出したのが、楽章間の拍手の是非をめぐる論争です。

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2005.02.22

演奏会での拍手についてもう少し

先日のエントリで20世紀の音楽会場での拍手のマナーと、その歴史について触れましたが、あれは私が調べ上げたものではなくアメリカのblogを適当に翻訳しただけの内容でしたので、コメントやトラバなどの様々なリアクションを頂くと却って恐縮してしまいます。

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2005.02.21

【レビュー】ヴァンスカ&ミネソタ管のベートーヴェン:交響曲第4番&第5番

vanska-beethoven

1.ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調作品60
2.同/交響曲第5番ハ短調作品67
演奏:オスモ・ヴァンスカ指揮ミネソタ管弦楽団

 私たちはベートーヴェン演奏が難しい時代に生きています。CD店やアマゾンのサイトを覗けばすぐに定評ある名演が手に入る現代では、現役のプロのミュージシャンは常に過去の偉人たちとの戦いを強いられています。世界記録を超えようと日々精進するアスリートのように、指揮者たちはより向上するために様々なことにトライしています。ある者は過去の名手を模倣し、またある者は最新の科学的知識を積極的に取り入れ、別の者は師の教えをひたすら信じ、またプレイヤー全員で助け合いチームプレーでアプローチしようとする者もいます。ヴァンスカとアメリカの楽団の場合はどうでしょうか。

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2005.02.20

オーセンティックな拍手の仕方

 管弦楽曲の楽章間には拍手をせず静かに次の楽章が始まるのを待つのが一般的ですね。このことは初心者に真っ先に伝えるべきコンサートでの約束事の一つになっていますし、日本では概ねこのルールは守られています。ところでこのクラシック音楽に独特な習慣はいつ頃から始まったのでしょうか。Alex Ross様のblog(英語)にその辺について触れたエントリがあったので紹介したいと思います。

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2005.02.19

バレンボイムの次は誰?

 現在来日中のピアニスト・指揮者のダニエル・バレンボイム(62)は「平均律」の演奏を行ったりシュターツカペレ・ベルリンを指揮したりと多忙な日程をこなしていますが、彼はシカゴ交響楽団(CSO)との音楽監督の契約を更新しないことを一年前から公言しています。そのためCSOは昨年6月から専門の委員会を組織し次期監督探しの準備を進めてきましたが、来週火曜日には後任人事をテーマに地元で公聴会を開く(→公式サイト:英語)そうです。興味のある方はだれでも参加OKのようなので、シカゴやその近郊に在住の方はいかがでしょうか。
 CSOの幹部によると「まだ選考の最初の段階」とのことで、まだ後任候補の具体名は挙がってきてませんが、「シカゴ・サン・タイムズ」紙(英語)ではいち早く候補者を予想しています。同紙がリストアップしたのは…

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2005.02.18

カエターニ イングリッシュ・ナショナル・オペラの音楽監督に

 現在メルボルン交響楽団の首席指揮者を務めているオレグ・カエターニ(47)が来シーズンからイングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)の音楽監督に就任することが発表されました(ソース:英語)。
 カエターニはこのオペラハウスとの仕事はこれまで一度しかない(2003年の「ホヴァンシチナ」)のですが「そのときのことはものすごく印象に残っています。それがこのような結果に結びついたのだと思います」と本人は語っています。ENOの芸術監督のSean Doranも「彼は歌劇場で25年間経験を積んでますから」と信頼を寄せています。

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マルチェロ・ヴィオッティ死去

viotti002 先週末リハーサル中に倒れたスイス出身の指揮者、マルチェロ・ヴィオッティ氏が治療の甲斐なく逝去されました。50歳でした。
 オペラハウスを主な仕事場にしていた彼の演奏は、ガスディアがタイトルロールだった「ベアトリーチェ・ディ・テンダ」(スカラ座:92/93シーズン)、ドミンゴらの「預言者」(ウィーン国立歌劇場:97/98シーズン)などのラジオ放送で拝聴しておりました。今年のフェニーチェ歌劇場の来日公演でも同行が予定されていたとのことでしたが、50歳とは100年前ならまだしも現代では早世といっても差し支えないでしょう。ここに謹んでご冥福をお祈りいたします。
<参考>
朝日新聞. フェニーチェ歌劇場音楽監督のビオッティさん死去 (17 February 2005)
PlayBillArts. Conductor Marcello Viotti in Coma After Collapsing (16 February 2005)

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2005.02.17

ヴァンスカのどこまでやるの?

 1号店でも取り上げましたが、日本でもファンの多い指揮者オスモ・ヴァンスカが何と北欧のポップス・グループのアバ(ABBA)の楽曲を自らアレンジし、それを手兵ミネソタ交響楽団の演奏会で取り上げることが発表されました。まさに「マンマ・ミーア!」ですね(笑)。
 最近のインタビュー(英語:要登録)によると、ヴァンスカは若い頃それほどアバに熱狂した訳ではなかったそうですが「『ダンシング・クイーン』がとても気に入っている」「彼らの音楽には興味深い点がたくさんあります。商業的で売るために作られているけれども、それと同時に聞いていて気持ちが良いし、素敵なメロディーだ。演奏家としても素晴らしいし、耳でも目でも楽しめる存在」と語っています。

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チェロを航空会社が「搭乗拒否」

 飛行機で移動するとき、楽器の運搬はどうしていますか?ヴァイオリンや収納可能な管楽器なら手荷物扱いで機内に持ち込んだりできますが、チェロなどの大型楽器の場合はその楽器のためだけに1席余分にシートを確保するなんて話はよく耳にします。まあある種のオペラ歌手は飛行機は2人分シートを取るという噂も聞くのですが、それについてはまたの機会ということで(笑)。
 ところが「ちゃんとチェロ用にシートを確保したのに出発カウンターで搭乗拒否を喰らった」というクレームをネットで見かけました。米MSNの「トラベル・トラブルシューター」(英語)コーナーに投稿したKathie Zettervallさんの娘は、オーディションを受けるためノースウエスト航空でテキサス州オースティンからデトロイトで乗り換えてイリノイ州のシャンペーンへ向かおうとしたのですが、同社の系列会社の便に乗り換えようとしたデトロイトで搭乗を拒否されました。仕方なく他社の便の搭乗券を購入し、しかもシンシナティ経由で遠回りを余儀なくされ、2回乗り継いだため「チェロ用ミールクーポンを2枚貰った」と嘆く娘思いの母親は「もうすぐオーディションを終わって地元に帰るのですが、復路もノースウエストなので仕方なく予約をし直そうと思ってます。改めて契約条件を確認しても楽器の搭乗は認められているようなのですが」と訴えてます。
 この投稿に対する旅行評論家のChristopher Elliott氏の回答は明快で、その要旨は「どうやら出発カウンターのスタッフがチェロを(サイズの制限のある)手荷物として扱ったのが搭乗拒否になった理由と思われる。しかし1席分確保して機内に持ち込む楽器は航空業界では「搭乗客」扱いとなる。結果的にはチェロは持ち込みOKではないか」というものでした。そしてこの点をノースウエスト航空に問い合わせたところ、同社は「復路の便はチェロの搭乗は問題ない」と回答すると共に、可哀想なチェリストに往路の運賃の2倍の金額を弁済することになりました。
 上記リンク先によると、「9.11」以後は(少なくともアメリカでは)搭乗前にエンドピンのチェックを受けることになっていますが、それ以外は特に楽器持ち込みについての確認事項はない、とのことです。これで安心してチェロ奏者は愛器を飛行機に持ち込めますね。でも今度私がチェロと一緒に飛行機に乗るときにはノースウエストは避けたいと思ってますが(苦笑)。

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2005.02.16

シクステン・エールリング死去

ehrling001 さる2/13にスウェーデンの指揮者シクステン・エールリング氏が逝去されました。86歳でした。
 エールリングといえばシベリウスの交響曲全集のレコードが有名なのですが、私は未聴です。個人的にはベルワルドの交響曲(Cat.#: BIS-CD-795/96;BIS)と、ローセンベリの交響曲第4番「ヨハネ受難曲」(Cat.#: CAP21429; Caprice)のCDが印象に残っています。ここに謹んでご冥福をお祈りいたします。
ソース:英語)

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2005.02.11

【レビュー】ウィーン弦楽六重奏団のウインナ・ワルツ集

waltzpolkas

1.ヨハン・シュトラウス:ワルツ「芸術家の生涯」作品316
2.同:シュネル=ポルカ「ハンガリー万歳」作品332
3.同:ワルツ「シトロンの花咲くところ」作品364
4.ヨハン&ヨーゼフ・シュトラウス:ピチカート・ポルカ
5.ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ「デュナミーデン」作品173
6.同:ポルカ「女の心」作品166
7.ヨハン・シュトラウス(ウェーベルン編):「ジプシー男爵」から 宝のワルツ
8.同(ベルク編):ワルツ「酒、女、歌」作品333

演奏:ウィーン弦楽六重奏団

 毎年正月になるとウインナ・ワルツの放送があるのでテレビの前でお付き合いしていますけど、確かに素晴らしい演奏なんですけど、なんか長時間フル編成オケでワルツばっかり聴いてると演奏が立派過ぎて聴き疲れするんですよ。こんなこというの私だけでしょうね、すみません。
 まあそんなわけで私は自宅でウインナ・ワルツを聴くときは小編成バージョンの方を好んで聴きます。CDではこれまではアルバン・ベルク四重奏団の演奏(Cat.# CDC 7 54881 2)を愛聴していましたが、最近購入したこのウィーン弦楽六重奏団のCDも気に入ったのでしばらくはこちらの方を専らプレイヤーのトレイに乗せることになるでしょう。
 なにより6人の弦の響きが素晴らしいので聞き惚れちゃいますね。明るくて少し甘めの音色が耳に優しいです。それからどのワルツやポルカも肩の力が抜けたゆったりとしたテンポで演奏してるので心地よいです。トラック2の「ハンガリー万歳」といえばクライバーを思い起こしますが、このCDでは彼ほどの緊張感はありませんが、それでも快適なテンポの愉快な演奏で楽しませてくれます。最後のかけ声には不意を突かれてしまいびっくりしましたが(笑)。最後の2曲は20世紀前半に「私的演奏協会」のためにウェーベルンとアルバン・ベルクがアレンジしたものでハーモニウムとピアノも加わりますが、彼らも弦楽に合わせてまったりムードで演奏しています。でもこうやって良い演奏で聴くと改めてヨハン・シュトラウスらの音楽の魅力を思い知らされますね。録音も大変よろしいですよ。なかなかの佳演でしたので、続編もやって欲しいですね。

(PAN CLASSICS, PAN 10-159, ASIN:B0000A01JH)

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2005.02.09

サロネン ロサンゼルス・フィルとの契約延長

 ロサンゼルス・フィルハーモニックは音楽監督のエサ・ペッカ・サロネンと2007/08シーズンまで契約を延長すると発表しました。サロネンは1993年にこのポストに就任し、現在12年目ですから、これは完全に長期政権ですね。個人的には指揮者サロネンはあまり評価していない(リゲティとケンカもしたし…)のですが、彼は指揮だけでなく作曲活動も結構旺盛に行っていて、最近の彼の作品の幾つかは結構好きだったりします。来年のロス・フィルのプログラムはそんなサロネンの意向を強く反映し、現代作品にかなり力点を置いた、というか「偏った」といってもいいプログラムになるようです。

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【レビュー】ジャニーヌ・ヤンセンの「四季」

ヴィヴァルディ:「和声と創意への試み」作品8より 協奏曲集「四季」
1.協奏曲ホ長調RV269「春」
2.協奏曲ト短調RV315「夏」
3.協奏曲ヘ長調RV293「秋」
4.協奏曲ヘ短調RV297「冬」

演奏:ジャニーヌ・ヤンセン(ソロ・ヴァイオリン)キャンディーダ・トンプソン、ヘンク・ルービング(ヴァイオリン)ジュリアン・ラクリン(ヴィオラ)マールテン・ヤンセン(チェロ)ステイシー・ワットン(コントラバス)エリザベス・ケニー(テオルボ)ヤン・ヤンセン(オルガン、ハープシコード)
(→amazon.co.jp

 私事ですが最近某所でヴィヴァルディの曲を練習しておりまして、その際指導をされたチェロの先生が「これはヴィヴァルディですから。そんなにヴィヴラートを一杯掛けないで下さい。ロマン派みたいに弾かないで」と仰いました。この先生は普段から特に古楽演奏をなさってる方ではないようなのですが、そんな方でもピリオド奏法に一定の理解を示しているのを体験した一瞬でした。
 そんな練習の翌々日にたまたま店頭でこのジャニーヌ・ヤンセンの「四季」を見かけました。彼女の演奏は未体験でしたが存在自体はあさがら様を始めネット上の評判を通じて知ってましたし、若い女性演奏家に目がない私は「今更どうして『四季』なのかな」と思いつつも購入しました。彼女は来日公演ではメンデルスゾーンやチャイコフスキーの協奏曲を披露していたようなので、イタリア・バロックでもあまり時代考証に囚われず自由に自分の持ち味を出すのかな、と初めは予想していましたが実際はピリオド奏法を積極的に取り入れていたので少し驚きました。このCDをiPodに取り込んで「これオランダで最近結成された古楽アンサンブルの演奏だよ」といって聴かせたらみんな信じちゃうかもしれません。そういった控えめのヴィヴラートとか独特のフレージングなどのピリオド奏法を取り入れつつも、音色には明るい輝きがあり、激しく細かいパッセージなどでは確かな技巧も見せてくれます。彼女のようなモダン奏法の奏者がピリオド奏法をものにするとこうなるのかな、という一例を聴いた気がします。彼女は古楽が盛んなオランダ出身ですし、そういう勉強もどこかで受けていたのでしょうか。
 ただこのCDではヤンセンはあくまで8人編成の一員で、彼女と同様ピリオド的な奏法の他の7人と共にアンサンブルとして一体化した表現を見せています。そしてヤンセンとそのファミリー、そしてソリストとしても活躍中のラクリン(なぜここに!?)を含むアンサンブルの古楽寄りの姿勢は、曲全体の解釈にも表れています。彼らは「四季」の曲の性格に合わせて大胆なまでに音色の変化を付けています。明朗な「春」と快活な「秋」はヤンセンの明るい高音の響きが全開ですが、「夏」での合奏の倦怠感の表現と硬質なフォルテは両隣の楽章との対照を際だたせています。また凍えるような「冬」の冒頭部では「四季」のキテレツ演奏の極北といえるイル・ジャルディーノ・アルモニコばりのスル・ポンティチェロを聴かせます。ラストの「冬」の第3楽章では全員の一糸乱れぬアンサンブルが見事です。
 ということでこのCDはヤンセン一人を聴く、というより8人編成のアンサンブルの妙味を楽しむCDのような気がします。彼女の個性を知るには、もっと彼女がプリマドンナを演じられるような曲でないと、という印象を持ちました。今度メンデルスゾーンの協奏曲がBS2で放送予定ですから、それを聴いてみることにしましょう。そしてピリオドアプローチを取り入れたこのCDを聴きながら冒頭のエピソードを思い起こし「古楽演奏はアーティストの間では完全に既成概念になったのかな」と思いました。
(ユニヴァーサル/DECCA UK,
UCCD-1132, ASIN:B0006TPH08(CD-DA).
475 618-8,ASIN:B0007PL7WI (SACD/CD-DA Hybrid; 2005年3月発売予定) )
(以上レビュー終わり)

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2005.02.06

クラシック音楽家のプロモーションの功罪

 先日「フィナンシャル・タイムズ」紙に「演奏するブランド商品」というタイトルの長めのコラム(英語)が掲載されました。クラシック音楽界のプロモーションの現状と、演奏家がそのクオリティとは離れたところで知名度を上げることも可能なシステムについてのコラム著者(Andrew Clark氏)の雑感がミックスされた内容ですが、私の知らない欧米の音楽界の現状にも触れられていて興味深かったです。例えばイギリスでは中堅の音楽家がプロモーションに月1000ポンド(約20万円)払っているなんて知ってましたか?そして常に最前線に露出するためには月3000ポンド(約59万円)くらい必要らしいですよ。正に「ひょえ~」な金額ですね。それだけ稼いでいるアーティストならまだしも、そうでない方は毎月の支払いが大変でしょうね。そこまでして有名になりたいのか、というのが正直な感想です。

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2005.02.05

【レビュー】ラフブランチ「ROUGH BRUNCH」

Rough-Brunch

1.マヨイイヌ
2.愛の蜜
3.ninjya
4.hose
5.香草
6.Meseno Horo
7.Mariovsuka Tresenica
8.polska-B
9.翼の問題
10..zoo
11.Hava Nagila
演奏:ラフブランチ(鳥谷竜司、牧野綾太、中森千夏、佐尾山健一、NAHO)

 「日本でもこんな音楽をやってるグループがいたのか!」と驚いた一枚。日本のトラッド系グループのラフブランチが東欧の民族音楽やその影響下のオリジナル曲を演奏しています。彼らはスピード感あふれる変拍子と哀感を感じるメロディで独特の音楽世界を繰り広げていますが、ちょっと風変わりなところもあります。一つは東欧系の音楽なのに北欧の弦楽器ニッケルハルパや古楽器のヴィオラ・ダモーレを積極的に使用しているところ。そして日本語の歌も取り入れているところです。ヴォーカルは東欧的な歌唱法ではないようです。こういう編成が歴史的にいって「アリ」なのかどうなのかは民族音楽に詳しくない私にはよく判りませんが、音楽的には「アリ」なのでしょうし、私は屈託無く楽しめました。日本語の歌も想像以上に違和感なく聴けました。ムジカーシュやブルガリアン・ヴォイスなどを聴かれる方には特におすすめですが、バルトークやコダーイらのハンガリーの作曲家を好むクラシック音楽ファンにも、CDの帯にある「まさにハイテンションな松阪牛のスキヤキのような肉一枚五千円の高級感を感じさせるステキなロマンチックミュージックだ!」という宣伝文句に惑わされずに聴いて欲しい気がします。購入は公式サイトか、そこでリストアップされている小売店でどうぞ。
(Sahara Blue record, SBR 1001)

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2005.02.02

BBC交響楽団の首席指揮者が決定

 レナード・スラットキン氏が辞任して以降空席だったBBC交響楽団の首席指揮者のポストですが、dokichi様のサイトでもご紹介の通り、このたびチェコ出身のイルジー・ビエロフラーヴェク氏が就任することが発表されました。就任の時期については何故かネット上ではまちまちなのですが、公式サイト(英語)には「今年10月から」と書いてあるので、これが正しいのでしょう。
 さてBBC交響楽団の重要な仕事の一つにあの熱狂的なプロムスのラスト・ナイトがあります。ユニオンジャックの大旗を振りながら「God, who made thee mighty, make thee mightier yet(我が国を強くなされた神よ、さらに強大にして下さることを)」と歌う観客の前でチェコ人のビエロフラーヴェク氏が指揮台に立ってくれるのかどうか、地元では心配する向きもあったようです。しかしどうやら本人は乗り気のようです。「今年はやりませんが、何れ指揮することになるでしょう。あのコンサートはとても特別なものだと感じています」「素晴らしい伝統だと思うし、私も伝統を尊重したい」とインタビュー(英語)でも仰っておりますので来年のラスト・ナイトの指揮者はビエロフラーヴェク氏で間違いないでしょう。で私はつい「きっと彼は小さなチェコ国旗を燕尾服の内ポケットから取り出して客席に向かって振るに違いない」などと良からぬ想像をしてしまうのですが(笑)。

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2005.02.01

本家「フォル・ジュルネ音楽祭」が閉幕

 フランス・ナントで開催されていた「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭が閉幕しました。参加アーティストの一人の下野竜也様のパフォーマンスも大絶賛だったようですね。それにしてもスタンディング・オーベーションとは。これを読んで東京でも彼の演奏を聴いてみたくなりました。
 さて閉幕と共に来年、そして再来年のテーマが主催者から発表されています。「ionarts」(英語)によると来年は「イギリスのルネサンス期およびバロック音楽」、そして2007年は「国民楽派」ということです。再来年はチャイコフスキー、ドヴォルザーク、シベリウスをフィーチャーするでしょうからまあいいとして、来年の「イギリス音楽」、しかも「ルネサンスとバロック」というのはどうなんでしょうか。もしこのテーマで日本でも音楽祭をやったとして果たしてお客さんが入るのでしょうか。正直心配です。

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【レビュー】巨匠たちの伝説~江口玲 plays at Carnegie Hall

Eguchi-Steinway

1.クライスラー(ラフマニノフ編):愛の喜び
2.同(ラフマニノフ編):愛の悲しみ
3.パデレフスキ:メロディOp.16-2
4.チェルカスキー:悲愴前奏曲
5.ゴドフスキー:ヨハン・シュトラウスの「こうもり」による演奏会用パラフレーズ
6.ショパン(バックハウス編):ピアノ協奏曲第1番より ロマンス
7.ホフマン:”モクセイソウ”より 夜想曲
8.リスト(ホロヴィッツ編):ハンガリー狂詩曲第2番
9.サンサーンス(ゴドフスキー編):白鳥
演奏:江口玲(ピアノ)

 このCDにはいくつもの愉しみがあります。先ずこのアルバムで使用されている19世紀の古いスタインウェイの音色。最初はあまりに現在のそれと異なる響きに驚き戸惑うかもしれませんが、やがて耳が慣れてくると楽器固有の美質を持った響きに気づくことでしょう。そして江口玲の確実な技巧に魅了され、さらには収録曲を作曲、またはピアニスティックにアレンジした巨匠たちのことを偲ぶことができるのです。

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