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2005.01.16

時事オペラ2題

Gaddafi001b イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)では2005/06シーズンに、エイジアン・ダブ・ファウンデイション(→公式サイト)のギタリストのチャンドラソニック(本名Steve Chandra Savale)の作曲によるオペラを上演しますが、このオペラの主人公があのリビアのカダフィ大佐(写真左)というので話題になっています。チャンドラソニックはBBCラジオのオンエア・インタビューで「最初に彼のオペラを書こうと思ったのは6,7年前」「彼は瞬く間にマスコミの前に現れ、悪魔のような扱いを受けた。彼は狂犬のように映った。だが最近はそんな悪魔のようなイメージから徐々に良い方に向かっているように見える」「彼は人を恐れさせる要素を持つと同時に魅力的な面も持っている」とカダフィに興味を持った理由を語っています。
 ただ最近BBCで放映された「ジェリースプリンガーショー・ジ・オペラ」の内容が「神を冒涜している」として47000件の抗議が放送局に押し寄せたこともあり、かつてIRAとも組んだ元テロリストを主人公に据えた今回のプロダクションに対する懸念が広がっています。「議論を呼ぶことを歓迎するか」という質問をマスコミから受けたENOの担当者はコメントを拒否しました。

Einstein_oppenheimer001 このような政治ネタを取り入れたオペラのパイオニア的存在は「中国のニクソン」のジョン・アダムズですが、そんな彼の新作オペラは原子爆弾の開発を行った「マンハッタン計画」のロバート・オッペンハイマー博士(写真の右の人物)を主人公に据えた「Atomic Doctor」です。演出は「クリングホーファーの死」でもタッグを組んだピーター・セラーズ。今年10月のサン・フランシスコ・オペラでの初演の指揮は公式サイトによるとドナルド・ランニクルズです。
 セラーズは実際の手紙や当時の公文書を下敷きに台本を製作しましたが、オペラ自体はオッペンハイマーの内面を描写していく内容のようです。アダムスはロスアラモス研究所の若き理想に燃えた研究者たちに興味を持ったといいます。「彼らの中には共産主義者もいたし、共産主義に共感する者もいた。オッペンハイマーもその中の一人だ」。後に研究開発の要職を外されたオッペンハイマー博士の「裏切られたという気持ち、そして常に行動を観察されているという感覚を表現したい」と語っています。
 原子爆弾そのものについてもアダムスはコメントしているのですが、これは訳してよいものかどうか…。私が訳さなくてもソースを見ればわかることですし、訳しますか。

 今回のオペラの製作にあたってはメイキング映像を撮影するために常にカメラがアダムスを追っかけているそうなのですが、ある日「もしあなたがオッペンハイマーの立場なら原爆を作りましたか」とカメラマンに尋ねられたアダムスは「おそらく同じ事をしたと思う」と答えたそうです。そして「私は平和主義者ではありません。非常に複雑な問題だとは理解していますが、少なくともドイツ人ではなく我々(アメリカ人)が原爆を造ったことは幸運だったと思う」と語っています。

(参考)
BBC NEWS. Opera to tackle life of Gaddafi (24 June, 2004)
BBC NEWS. 'Gaddafi - The Opera' on its way (14 January, 2005)
Marin Independent Journal. Composer premieres new opera 'Doctor Atomic' (14 January, 2005)
Wikipedia. Robert Oppenheimer

(6/12追記)アダムスの「Doctor Atomic」の英語のあらすじがこちらで読めます。一方カダフィ大佐のオペラの初演は06/07シーズンにずれこんだようです(→参照)。

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