デンマークの海運王 オペラハウスを建てる
すでに「オペラキャスト」でも取り上げられてますが、デンマーク・コペンハーゲンのウォーターフロントに新オペラハウス「Operaen」(オペラァン)が建てられ、今月15日の開幕前から奇抜な外観が威容を誇っています。海辺に面したオペラハウスといえば思い浮かぶのはヨットの帆を模したシドニーのオペラハウスですが、このコペンハーゲンのオペラハウスのことをニュースサイト「andante」(英語)のJan Olsen氏は「巨大なランタン(ランプ)を思わせる」と表現しています。
このオペラハウスは外観もすごいのですが、それ以上にすごいのは一人の資産家が建築費用の全てを負担したことです。そんな太っ腹なお方の名前は Mærsk Mc-Kinney Møller氏。海運業、造船業、航空会社などを経営し、さらに北海での原油と天然ガスの発掘権も持っていたというかなりのヤリ手の実業家だった方で、個人資産の総額は51億クローネ(9億800万ドル=943億円)だといいます。そんなMc-Kinney Møller氏、初めは13億クローネ(2億3100万ドル=約240億円)でクラシック音楽専用ホールを建てるつもりだったのですが、デンマーク王立劇場から「オペラハウスは老朽化しているため、新築するなら歌劇場の方が」と聞くや否や歌劇場建設に計画変更したため、金額は当初の倍近くの25億クローネ(4億4300万ドル=約460億円)に膨れあがってしまいました。それでも本人は「いくらかかったかは問題ではない」と冷静です。
Mc-Kinney Møller氏はオペラハウスの設計にも深く関わりました。特に彼は建築資財に強いこだわりを示し、その研究のために世界中のオペラハウスを自家用ジェットで視察したといいます。その成果か建物はドイツ産の石灰岩で覆われ、廊下はイタリア産の大理石で敷き詰められ、客席にはカエデ財がおごられ、外の広場は中国産の御影石が使われています。さらに天井には24金のパネル10万5千枚が使われるという豪華さです。彼が全体設計を任せたのはその道では高名な建築家Henning Larsen(ヘニング・ラーセン)氏なのですが、Mc-Kinney Møller氏はガラス張りのエントランス部にタテの鉄の枠を加えるように命じたりもしました。そして昨年10月に完成した1700人収容、五面舞台の建物をデンマーク政府に寄付しました。
このように贅を尽くした作りの「オペラァン」は、チボリ公園、人魚姫像に並ぶコペンハーゲンのランドマークになりそうな予感がしますが、肝心の中身はどうなんでしょう。ホールのスタッフは音響には自信を持っている様子ですが。今月15日の開幕記念コンサート(プログラムは「オペラキャスト」をご覧下さい)に続いて「アイーダ」(ホーネック指揮、アラーニャ出演)、「エレクトラ」(シェーンヴァント指揮、コンヴィチュニー演出)などが上演されますが、誰か現地でレポしてくれないものでしょうか(特に許光俊氏に「エレクトラ」の観劇の予定はあるのでしょうか?)。その後もエルヴィス・コステロ作曲による、童話作家アンデルセンを主人公にした新作オペラ「The Secret Arias」や、「リング」全曲上演などの興味深いプロダクションが予定されています。
(1/13追記)「SEEDS ON WHITESNOW」の丸田てつや様のコメント欄でのご指摘を受け、見出しを変更いたしました。
(1/23追記)エルヴィス・コステロの作品の詳細をデンマーク王立劇場が発表しました(ソース)。オペラはアンデルセンと当時の国民的歌手ジェニー・リンドへの叶わぬ恋を主題に進行し、アンデルセンが彼女のために書いた詩も用いられるとの事です。
(2/10追記)上述の「リング」の「ワルキューレ」にはジークムント役でプラシド・ドミンゴが一晩だけ(来年4/7)登場することが判りました(ソース)。
(2/20追記)当日放送の「芸術劇場」(NHK教育)でこのオペラハウスが紹介されました。ブラウン管を通してですが素晴らしい建物ですね。
(3/22追記)このニュースを「朝日新聞」が取り上げるとこうなります。
The comments to this entry are closed.
Comments
ばってん様はじめまして。興味深い情報をありがとうございます。
船の名前のエピソードは家族愛を感じますね。そんな話を聞くと、彼は昔ながらの資産家気質を持った方のような気がしますね。いずれにしても潔く投資して頂いたのですから、この歌劇場が今後滞りなく運用されることを祈ります。
Posted by: 「坂本くん」 | 2005.01.14 20:39
マースクといえば、ファミリーに子供が産まれるたびに、その子の名前を付けた新造船、それも大型コンテナ船を造船していましたね。マースクの薄いブルーのカレンダーがとてもお洒落で、年末になると、お客さんがいつも取り合いになった記憶が有ります。そんなマースクがオペラハウスまで作るとは!なんか本当に素敵な金持ちですね。守銭奴にはならず、決して儲けなど生まれてこない文化事業に対して、ポイ!と出資する寛容さ、気風のよさを感じます。
Posted by: ばってん | 2005.01.14 04:33
情報ありがとうございます。この方は「石油王」というより「海運王」ですね。見出しを直した方がいいかもしれませんね。私もこれからは横浜や神戸に出かけたときに「MAERSK」印を探してみます(笑)。
ここの求人情報サイトも見てみました↓
ttp://www.maersk.co.jp/msljp/recruit/index.html
この会社、のんびり屋の私にはとても務まりそうにありませんね(笑)。
Posted by: 「坂本くん」 | 2005.01.13 12:43
マースクさんですね。こちらの方でしょうか。
http://www.maersk.com/historyTemplate.asp?nav=1&subnav=12&id=5&decade=0&count=4
我が国では世界最大の海運業として、結構この方の会社にお世話になっているはずです。
横浜の本牧の奥では、この会社が港を占有し、世界最大のコンテナ船が寄港しています。
コンテナ船もビックサイズだけど、このオペラハウスもスケールが違いますね。
Posted by: 丸田てつや | 2005.01.13 08:27