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2005.01.25

作品委嘱ノススメ

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(写真)音楽史上に残る2大パトロン、ルイ14世(左)とルードヴィヒ2世(右)

 唐突ですが皆さん、自分の大切な人にその思いを伝えるためにどんなことをしますか?相手の方が気に入ってくれそうな品をプレゼントしたり、お食事を共にするのが一般的な方法だと思いますが、音楽愛好家の中には「オリジナル・ラブソングを贈るぜベイベ!」という方もおられるのではないでしょうか(笑)。ただそんなことしたら却って相手が引いてしまうんじゃないか、と心配の皆さんに一つアイデアを。その道のプロに曲を書いて貰うのは如何でしょうか。アメリカではそんなに珍しくないみたいですよ。「ニューヨーク・タイムズ」紙の最近の記事からそんなアメリカの事情を紹介します。
 ミネソタ州の弁護士Jack Hoeschler氏とその妻が、結婚15周年の記念に何か特別なことが出来ないかと思いついたのが「自分たちの子供がフルート、オーボエ、チェロ、ピアノを演奏できるから、その編成でプロの作曲家に曲を書いてもらおう」というもの。デイトン・ハドソン財団で働く妻が、仕事で付き合いのあった作曲家のStephen Paulus氏に依頼したところ、彼は「1分あたり100ドルでいいですよ」と快諾しました。そして8ヶ月後に「15周年」という数字にちなんだ演奏時間15分、代金が1500ドルの室内楽作品「Courtship Songs for a Summer's Eve」が完成し、プライベートコンサートで世界初演されました。現在ではその作品はCD(→amazon.com)にもなり、委嘱主の夫婦は38回目の結婚記念日を迎えました。「すごく面白い経験をさせて貰ったので、その5年後にまた曲を依頼したんですよ」と話すHoescheler夫妻は(5年毎にPaulus氏に依頼する結婚記念作品を含めて)現在までに70もの新作を委嘱しています。「ほんとに気軽にできますから」とHoescheler氏は強調しています。確かに「1分100ドル」というのは驚きの低価格ですね。かつてのルイ14世やルードヴィヒ2世のような大金持ちでなくても比較的お手軽にパトロンになれるんですね。

 この夫婦のように個人で趣味として作曲を委嘱する「プライベート・パトロン」はアメリカにはたくさんおられるようです。レオン・カークナー(キルシュナー)の「チェロ協奏曲」(→amazon.co.jp)は、ある夫婦が結婚40周年記念にヨー・ヨー・マに新作演奏を依頼したのがきっかけで作曲されたものですし、テリー・ライリーの最近作「Sun Rings(太陽の輪)」の製作に深く関わったWilliam Rubright氏はアイオワ州立大学の歯科医学教室の教授だったりします。最近アンドレ・プレヴィンに新作を依頼したサクラメント在住のライター、Jennifer Basye Sander女史などは「まるでオーストリアの王様(「坂本くん」註:ハプスブルグ家?)がやるようなことだけど、そんなに難しいことではなかったわ」とあっけらかんと語っています。
 個人パトロンと作曲家の間を仲介する団体もアメリカには存在します。その一つ「Meet the Composer」では「An Individual's Guide to Commissioning Music(個人で作曲を委嘱する方法)」なる本を出版しました。その本ではこれまでの事例に触れながら実際の手順を紹介しています。同団体の所長Heather Hitchens女史は「個人でそんなことが出来るのかという方が多いと思いますが、それは違います。きっと費用が高くつくと思われているんじゃないでしょうか。」と述べています。「Meet the Composer」では活動開始してから10年余りで数多くの作品を生み出し、その活動範囲も広がりをみせていて、今年6月にはドイツ・ポツダムでこの団体の関わった作品が初演されるとのことです。またこの団体はヴァイオリン・ソロのための作品にかかる委嘱費用3500ドル~5000ドルを個人に負担して貰い、その新作を五嶋みどりやワーディム・レーピンに初演してもらうという企画もやっています。その他にはパキスタンで誘拐され殺害された記者ダニエル・パールを追悼する作品(これは連作となります)の出資者というのも募集しています。ここまでくると委嘱者と個人のパーソナルな関係を超えて「委嘱ビジネス」というノリになってしまい、若干とまどいを感じたりもしますが。
 以上はアメリカの事例ですが、日本の場合はどうなんでしょうかね。個人が作曲家に作品を委嘱するのにかかる費用の相場ってどれ位なんでしょうか。というかそんな人がいるんでしょうか。でもアメリカ並みに「1分100ドル」ならぬ「1分1万円」くらいなら頼んでもいいかも、という気にさせられますよね。

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Comments

こんばんは。実際こういうものの価格の相場ってどうなんでしょうね。ケース・バイ・ケースだと思うんですけど。
実は学生オケ時代に一度新作初演を経験させて頂いたことがあったんです。そのときはおいくらで書いて頂いたかは正確には忘れましたが、亭主様のご推察の通り「1分=250ドル」前後だったのではなかったかと記憶しています。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.01.26 at 21:10

おもしろそうですね。

ところで、やっぱり演奏時間当たりで料金は決まるんですね。それと、あ、編成でも決まるんでしょうねぇ。室内楽だと1分100ドルだけれど、オーケストラ曲(メシアンばりの大編成)だと1分250ドルとかかもしれませんね。五線譜も特注しないといけないかもしれないし。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2005.01.26 at 19:18

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