最近出たライブ音源のCDをいくつか
この間自宅に届いたクレジットカードの明細書を見てびっくりしましたよ奥さん(誰の?)。ついついCD店の棚に並んでたものを買い込んだり通販サイトで見つけた面白げなアイテムを無節操にクリックしたりしてたおかげで請求額が大変なことになってましたよ。「何でこんなに買い物するのよ!」とカミさんに追及されたのは言うまでもありません(苦笑)。それというのも歳末商戦の時期に合わせて注目のリリースが相次いだからですよ奥さん(だから誰に?)。来年はCDの購入枚数を減らしてその空いた時間をFMやらネットラジオを聴くのに回そおっと。
以上で簡単ではありますが「坂本くん」の今年の反省会を終わらせて頂くとして(笑)、今年の年末の新譜は例年以上に放送用音源のCD化が際だって多かったような気がします。これについては多くのファン(特にヒストリカル演奏を好む日本のファン)の声に応えたものと評価できますが、一方でレコード会社サイドが、どれだけ売れるかわからない新録音を発売するリスクを避けた、とも考えられなくもないので、来年以降は今年以上に新録音のリリースで私たちを喜ばせて頂きたいな、と思います。ともあれそんなCD化された放送用音源の中から気になったモノに手短にコメントを。
●ベートーヴェン/交響曲第7番&モーツァルト/交響曲第41番
(テンシュテット指揮北ドイツ放送響)
ネットのあちこちで絶賛の嵐ですが、それもうなずける内容。演奏全体に一本スジが通った安定感があって、それが並々ならぬエネルギーとスケール感を生んでいる、実に堂々とした演奏。強奏部での力強い響きは印象的だが、その中でトランペットとホルン、ヴァイオリンの輝きがまぶしいくらい際だっている。モダン楽器のベートーヴェンの究極を聴いたような感じ。これだけ素晴らしい演奏をもしテンシュテットの生前ライブで接していたら今頃私はアンチ古楽器になってたかも(笑)。
(EMI 7243 4 76740 2 0, ASIN:B0006399L2)
●ワーグナー/管弦楽曲集
(S=イッセルシュテット指揮北ドイツ放送響)
録音時期がまちまちで音質の悪いものもあるのが残念。しかし音が良い方の録音で壮麗かつ迫力に満ちたワーグナーの音楽を聴くと、それだけで顔が綻んでしまう。S=イッセルシュテットの解釈は一定のテンポを崩すことはないもののどこかロマン的なしなやかさと柔らかさを感じる。個人的にはワーグナー演奏にありがちな威圧的な厳しさを前に出した演奏よりも音楽の世界に感情移入しやすい。音の悪い方の録音も演奏自体は素晴らしい。特に「『マイスタージンガー』第1幕への前奏曲」では、堂々とした威厳のある響きが曲の雰囲気にマッチしているし、各楽器間のバランスをうまくコントロールして内声部も聴かせる手腕の良さも見事。こんな造形美あふれる演奏をもし生前ライブで接していたら今頃私はワーグナー協会の会員になっていたかも(笑)。
(EMI 7243 4 76734 2 9, ASIN:B0006399JE)
●ショスタコーヴィチ/交響曲第5番他
(ケーゲル指揮NHK交響楽団)
上述の演奏を聴いた後でこのCDの1曲目の「マイスタージンガー」前奏曲を聴くと、ケーゲルとS=イッセルシュテットの解釈には共通点を感じる。対旋律の処理の仕方や、曲のバランスなどがそっくりとは言わないまでも、音造りの指向が似ているような気がするのだ。「猟奇的」と形容されることもあるケーゲルの音楽だが、これを聴くとドイツ指揮芸術の基本を踏襲する「本流」の指揮者なのだと実感する。その次のショスタコーヴィチでは弱音部(特に第4楽章の中間部)で他の演奏では聴かれない独特の不気味なまでの美しさが耳に残ったが、曲全体の劇的な盛り上がりにも不足しない。ところでこの日はもう一曲ヘブラーの弾くモーツァルトが演奏されたらしい。これをもし生前ライブで接していたら…もういいって?(笑)。
(キング KICC-3058, ASIN:B0006FGY4A)
●「新日鉄コンサートの歴史」
ニッポン放送ラジオのクラシック音楽の長寿番組が、スポンサー降板のため終了となる。そのメモリアルとしてこれまでの放送音源からセレクトされた演奏をCD2枚組で発売。私が好きな堤剛の弾く三善晃の「チェロ協奏曲」は協奏曲というより「チェロ独奏のある管弦楽曲」といった趣でファンとしては残念。他にも辻久子の貴志康一、江藤俊哉のブリテン、立川清登のロッシーニなど日本人演奏家のレアな演奏が数多く収録されているが、やはり田中希代子のショパンが殊の外素晴らしい。それにしてもスポンサーの新日鉄がこの番組をAM放送で続けたのには何か理由があったのでしょうか。それが謎であり残念なのですが。
(ポニーキャニオン PCCL-00585, ASIN:B0002XVTCI)
The comments to this entry are closed.
Comments