テレビも見てますよ
「NHK音楽祭」としてオンエアされたコンセルトヘボウ管のライブを拝見。指揮者のマリス・ヤンソンスはあの初来日(ムラヴィンスキーの代役としてレニングラード・フィルを指揮)以来のお付き合いだが、思えば彼の指揮する「悲愴」をこれまで何度となく耳にしてきた。彼はキャリアの節目節目で必ず「悲愴」を取り上げている。オスロ・フィルのザルツブルグ音楽祭デビューの時も、ウィーン・フィルを始めて指揮したときも彼は「悲愴」をメイン・プログラムにした。その何れも見事な演奏だったが、今回はそれに勝ると劣らない素晴らしいパフォーマンスだった。第1楽章の再現部の表現などはこれまでのヤンソンスの演奏と同様だったので彼らしさはあったと思うが、それ以上にコンセルトヘボウ管のポテンシャルの高さが際だち、管弦楽の明瞭度、表現力という点でこれまで聴いたヤンソンスの「悲愴」では一番の出来だったと愚考する。しかしそれにしても敏腕指揮者の棒の力を以てしてもコンセルトヘボウの独特の個性はきちんと保持しているわけで、その強靱なまでのアイデンティティの強さには驚かされる。このコンセルトヘボウとドレスデン国立管、そしてチェコ・フィルは世間の荒波にもめげず己のサウンドを貫き続けている。古楽に眼差しを向けるベルリン・フィルやウィーン・フィルとの立場の相違が最近明確になっていて、この二分化が面白い。
そのあとN響の定期演奏会でサヴァリッシュの(腰掛けながらの仕事であるが)元気なお姿とエマヌエル・パユの赤い蝶ネクタイ(笑)を確認する。ブラームスの「第1番」ではサヴァリッシュの棒の微妙な変化にN響がよくついていき、オケと指揮とが一体化した演奏だった。指揮者の指示と思われる細かなアクセントや強調などもうまく処理されていて、音造りにきめ細かさを感じた。それとあくまで個人的な印象だがこれまでのサヴァリッシュより音楽の恰幅が大きくなったような気がした。そして何よりもN響定期でシューマンや「英雄の生涯」などの名演奏を聴かせてくれたサヴァリッシュが再び日本でアーティストとしての健在振りを見せてくれたのが嬉しい。
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