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2004.10.15

【レビュー】ブライアン・ウィルソン 「スマイル」

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(冒頭からお断りさせて頂きたいのですが、今から書く文章はビーチ・ボーイズのアルバムといえば「ペット・サウンズ」をやっと先日のamazon.co.jpの「輸入盤掘り出し市」でゲットしたばっかりの部外者が、勝手なことを思いつくままに述べたものなので、まあなるべく他人を傷づけるようなことは書かないように努めますので許して下さいな。)
 正直ビーチ・ボーイズのことはよく知らない私ですが、そんな私でも「スマイル」という未完の大作の存在は以前からよく耳にしていました。活字媒体からの情報によると「芸術性の高いアルバム」「これが当初の予定通りにリリースされていたら音楽シーンは今と違うものになっていたかも」とか、まあとにかく凄いらしいというのは伝わってくるのですが、実際はどんなものなのか聴いてみないとピンと来ないなあ、と思いつつも流出モノのブートレグも聴かずに過ごしてきました。ただ今年になって「スマイル・ツアー」のことを萩原健太さんの熱いレポで知り、その後「SMiLE」のスタジオ録音が始まったとの報を聴くにつれ、何となく私もこの音楽のことを意識するようになりました。
 でCDリリース後小売店の視聴機で何気なく聴き始めたところ、冒頭の独特の憂いを帯びたコーラスからぐいぐいと「SMiLE」の世界に引き込まれてしまいました。これまであまり耳にしたことのない独創的なタイプの音楽なのに、すごく心地よくて耳に馴染むし、聴き進むにしたがって幸福な気分になっていく自分。

 CDにはボーナストラックを除くと17曲収録されてますが、曲と曲との間は休みなく演奏され、一貫したテーマの歌詞や旋律の反復(モチーフの使用)などの工夫により全体を1つの組曲として楽しめるようになっています。それでいて楽想も多彩で飽きさせないので、まさに息もつかせないとはこのことです。そして最後の「Good Vibrations」の直前にあの冒頭のコーラス(というかコラールと敢えてクラシック音楽風にいってしまおう)が回想される場面での劇的効果は抜群です。私的には「Good Vibrations」はこれまでセクシャルな内容の濃い猥雑な曲というイメージだったのですが、こうやって「SMiLE」の中の1エピソードとして聴いてみるとなぜか神々しい崇高ささえ感じられます(間奏部でオルガンの響きもインサートされるせいでしょうか)。
 日本盤のライナーノートには「SMiLE」の製作された当時の逸話が幾つか書かれていますが、とりわけ気になったのは「Surf's Up」(トラック10)が1966年の製作当時にバーンスタインがホストを務める番組で(ブライアン・ウィルソンのピアノ・ソロによって)オンエアされたことです。「ウエストサイド物語」の作曲家であり、自らの音楽番組「ヤングピープルズコンサート」でもアメリカ音楽について盛んにコメントしていたバーンスタインは「SMiLE」の音楽に特別なものを感じたのかもしれません。
 個人的にはこの音楽、まさに私のイメージする「アメリカ音楽」の特徴(「何でもあり」で「ごったまぜ」)そのもののような気がします。雑多なスタイルを織り込んだ実験精神あふれる「SMiLE」はジョン・ケージやミニマル音楽を生んだアメリカ音楽の歴史の系譜に加えても何ら違和感のない、20世紀アメリカの芸術的成果ではないかと思います。ただ決して聴く者を退屈させない良質のポップスである、という点は忘れてはいけませんが。
(ワーナーミュージック/Nonesuch, WPCR11916;ASIN:B0002LI11M)

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