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2004.08.02

【レビュー】ラトル&バーミンガム市響のハイドン

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1.ハイドン/交響曲第22番変ホ長調「哲学者」
2.同/交響曲第102番変ロ長調
3.同/交響曲第86番ニ長調

 ラトルはハイドンの交響曲をレパートリーにしている、といっていいでしょう。私もよくラジオで彼のハイドンを聴きましたが、それは何れも欧州大陸のオケに客演したときのもので、快活で聴いていて楽しい演奏だった印象があります。でそんなラトルがバーミンガム市響と録音したCDをヤフオクで見かけたので落札して聴いてみましたが、正直驚きました。

 誰がどのオケを指揮した演奏か、何の予備知識もなくこの演奏を聴いたら私は「イギリスの古楽器オケの録音ですね?」と答えてしまう自信があります(笑)。ラトルが古楽器オケのエイジ・オブ・エンライトゥンメント管と何度か共演したことは知識としてありましたし、ウィーン・フィルとの一陣の嵐のようなベートーヴェン・ツィクルスも聴いたことがあるので、再生ボタンを押す前から、ある程度は古楽器風にまとめてくるとは思っていましたが、トラック1「交響曲第22番 変ホ長調」の第1楽章の冒頭から弦楽器が明らかに古楽奏法、すなわちガット弦でかつノンビブラート奏法で弾いていることを容易に確認することができました。しかも通奏低音としてチェンバロを追加しています。ハイドンがエステルハージ時代に交響曲でチェンバロを実際に使用したかどうかは古楽派のあいだでも議論のあるところですが、ともあれ「18世紀のスタイルで演奏しよう」というラトルの意欲は充分に感じられます。この演奏の録音されたのは1994年、ジンマンの有名なベートーヴェン録音の約3年前にあたります。ジンマンの名門オケを古楽器サウンドに塗り替えるという実験的演奏の前に既に同様の試みを行っていたことになります。
 それに続く「交響曲第102番 変ロ長調」と「交響曲第86番 ニ長調」ではチェンバロは追加していないようですが、それでも弦楽器の古楽器奏法はそのままです。それからこれは不確かですがフルートは木製かもしれません。この2曲では音の繊細な重なり具合の妙を聴かせてくれます。「第102番」の第2楽章では時間が経つにつれ楽器の数が増えていくのですがそれでもチェロ・ソロはそんなに大きい音量でないにも拘わらず明瞭に聞こえ続けていて、大音量を要しない古楽器奏法の特徴を生かしています。他にもラトルはハイドン特有のギミックもうまく表現しています(例えば「第102番」の第4楽章のダイナミックレンジの広さとか)。
 こうやってバーミンガム市響を古楽器オケに衣替えしてしまった演奏を聴くとつくづく「ラトルは何でもやれちゃうなあ」と思ってしまうのでした。これはこれまでも思っていたことなのですが。ラトルのブルックナーの「第7番」なんかを聴いてもうまく「らしく」まとめてたし、ブラームスのピアノ四重奏曲をシェーンベルクが管弦楽に編曲したものでもどの他の演奏よりブラームス「らしく」聴かせてくれるんですよね。そんなクラシック界の優等生的な一面が、このハイドンのCDからもうかがえます。

(EMI:7243 5 55509 2 7)(今年9月再発予定:#5629752;ASIN:B0002RUAE2)

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