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2004.08.28

聴いてますか~、NHK-FM。

 「★てれびまにあ。★」によると今年8月度の10代(12-19才)男子のラジオ聴取率が平均1.2%と前月度より落ち込んでいるそうです。これを新聞の見出し風に解釈すると「若者のラジオ離れが進んでいる」ということになるのでしょうが、全体でこの数字ですからNHK-FM単体だとどんな数字になるのだろう、と考えるだけで背筋が凍る思いがします。私は30代ですが、ウェブログで「NHK-FMを聴いてますよ~」というメッセージを送りたくなったのでNHK-FMの話を。今日は特にクラシック音楽番組のDJについて書いてみたいと思います。

 クラシック番組のDJの方々で昔からお馴染みの方といえば黒田恭一氏と吉田秀和氏でしょうか。黒田氏は番組冒頭と終了時のあいさつが丁寧なので、聴いてるこちらがラジオに向かっておじぎをしてしまいそうになることがあります(笑)。吉田氏は人名の発音にオリジナルに忠実であろうとする意思を感じます。「ブラームス」なんか無理矢理カタカナに置き換えると

「ブッラッハアーンムス」

てな感じでしょうか。そういえばNHKは原語に忠実に人名を発音しようとしていた時期がありましたね。「アバド」を「アッバード」と呼んでたのは有名ですが、最近はなぜか「アバド」になりましたね。NHKの方針でも変わったのでしょうか?また話が逸れました(笑)。
 最近「ネコケン」こと金子建志氏がNHKに登場なさらないのは残念です。彼のDJの特徴は、MCに「聴き比べ」、比較試聴の時間があったことです。我が家のエアチェックテープには「春の祭典」のあの「ズ!・ズ!・ズ!・ズ!」という部分だけを10種類近くの異なった指揮者のレコードで比較試聴し、それに金子氏が短いコメントを付けたものが残っています。ヴァントのブルックナーのライブの放送のときは「カラヤンと解釈がここが違う」というのを説明されてましたし、同じブルックナーでも普段演奏されないエディションの楽譜を使った演奏の時は、随分懇切丁寧にハース版とノヴァーク版の違い、ノヴァーク版の異稿の中での相違点などを説明されておられました。まあクラシックマニアが普段仲間同士で集まったときにやる事を公共の電波を使ってやっていたようなものでしたが、面白かったです。(ここからは小声で)ただ金子氏がお好みの演奏のときと、そうでないときとで何となく声のトーンが違うような気がしたのは私だけ?
 最近のNHK-FMで私が好ましく感じているのは、日曜日の「FMシンフォニーコンサート」の吉松隆氏です。吉松氏は少し前にもNHKでDJをされていて、その頃は「一応クラシックの番組なのですが…」と前置きしながらツェッペリンの「天国への階段」を掛けたり、随分ジャンルにとらわれない自由な方向性の番組をされておられました。この番組自体はNHKとしては短命だったと記憶してますが、そのノンジャンルのコンセプトは今のゴンチチさんの番組に継承されていると個人的には思います。
 そんな吉松氏が「FMシンフォニーコンサート」でDJとして復帰されてからしばらく聴き続けています。復帰当初は「名曲解説全集」に載ってそうな内容の語りが多くて物足りなかったのですが、最近は随分こなれてきたのか期待していた吉松節が聞けるようになって喜んでいます。この間の「タンホイザー序曲」の時は、新しい方の(唐沢寿明版の)「白い巨塔」の印象的なシーン(助教授室でオペの手順をイメージしている場面)でこの「タンホイザー」がBGMとして使われているのを見て「タンホイザーの『聖』と『俗』のテーマがやっと合点がいった」と話してました。ただオンエア時には「白い巨塔」とか「財前」とか言うな、とNHKに止められて困ったそうで(→ご本人のダイアリー:7/4日分参照)、それらのキーワードを使わずに巧みに聴取者に解る形で表現しておられましたが。でもむつかしいのかなぁ、それくらい言ってもいいと思うけどなぁ。あの話題になった体操の五輪の実況、思いっきりゆずの新曲のタイトル言っちゃってるし(笑)。
 でこの日のオンエアは「タンホイザー」の後がベルクの「ヴァイオリン協奏曲」だったのですが、吉松隆氏といえば何のためらいもなく「ゲンダイオンガクが嫌いだ!」と仰る方として有名ですので、十二音技法を用いた代表作であるこの作品でどんなMCを聴かせてくれるのか、少し邪悪な心で聴いていましたが、ここで意外な事実が判明!吉松氏は若い頃オーケストラスコアを購入し熱心に聴きながら楽譜を追うほどベルクの「ヴァイオリン協奏曲」のファンだったのです。結構この曲について熱く語っているので「吉松さん、すこし丸くなったのかなあ」と思いながら聴いていたのですが最後に一言ボソッと

「この曲以降のゲンダイオンガクは全部捨てていいと思っています」

 変わってないじゃん…。
 でもユニークなMCが聴けて楽しいのでNHKの中の人にはどうか少々の毒舌込みでも大目に見て頂きたいなと、そう思っております。
 同じく日曜日の「現代の音楽」のMCで、吉松氏と個人的に親交のあるという西村朗氏も音楽業界の裏話を一杯話して下さるので面白いですよ。「裏話」といってもドロドロした話ではなくて、学生時代の先生の話とか、吉松氏とのエピソードとか、それこそ「こぼれ話」なんですが、でもおもしろいです。特に先輩作曲家の三善晃氏の若かりし頃の端正な顔貌について熱く語っていたときが個人的にはツボにはまりました。なんだか私も熱く語ってますが、ともかく「聴いてますよ~、NHK-FM。」ということで(笑)。

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