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2004.07.09

ベルリン・コーミッシェオパーの「後宮よりの誘拐」

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(写真)「後宮からの誘拐」の1シーン。
マリア・ベングトソン(コンスタンツェ)とギュントバート・ワーンズ(セリム)

 「ベルリン・コンサート日誌」によりますと、先月20日にベルリン・コーミッシェオパーで上演された歌劇「後宮よりの誘拐」がそのスキャンダラスなまでにリアルかつ執拗な暴力描写で話題になりました。演出家のビエイト氏は現代の売春宿に舞台を置き換え、太守セリムがその宿のボス、コンスタンツェとブロンデはそこの売春婦という設定。
 でコンスタンツェはノルマを達成しないとセリムから性的暴力を加えられるということなのですが、上記リンク先によると首輪で繋がれたコンスタンツェが登場し、アリアを歌う間にセリムはどんどんコンスタンツェの服を脱がしていき、そして下着に手を突っ込んでコンスタンツェの局部を触ったりするそうです。更にその横で「ポン引きのボス」役のオスミンが女性を切り刻んだりするのです(!)。「最初は両腕、鮮血がしたたる。今度は、首筋を切り、意識がなくなったあとは、乳房を切断」し、その乳房を手に掲げるといった風に。客席では「2,30人近くの観客が、逃げるように退場」し、「吐きそうだ」などの野次が飛ぶ有様だったそうです。
 ここまでなら最近はやりのセンセーショナルな演出、というあくまで芸術上の問題なのですが、この公演後スポンサーのダイムラー・クライスラーが財政支援撤回を表明(のちに否定)し、一挙に問題が大きくなってしまいました。ベルリンの3つのオペラハウス(残りの2つは国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ)はドイツ統合後どんどん補助金がカットされ、つねに財政問題を抱えているので、スポンサー収入のカットとなると大事なのです。
 で公演後コミッシェオパーでこの公演をめぐり劇場支配人、音楽監督、そして現役の売春婦(!)を交えた討論会が開かれたというのも驚きです。この場で売春婦の一人が「この公演を見て非常に感銘を受けた」「性産業には確かに暴力が蔓延している。聞いた話によると、タクシー業界での暴力沙汰というのはそれ以上のものがある」「これをきっかけにみんなが、性にからむ暴力のような問題についてお互い議論しあってもらえるようになれば、とてもうれしい」と語ったそうです。このように性的暴力に対する告発という見方の一方で、別の参加者から「私は吐き気を催すばかりでした。私がオペラを見に来るのは、魔法をかけられたいからなんです」という意見も出ました。
 いろいろな驚きの連続だったこの公演、こうやってスキャンダルになっても単にフタをするのでなく、いろいろと公の場で議論するというのが素晴らしいと思いますね。それにひきかえ我が国のプロ野球の議論を許さない密室性といったら…。

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