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2004.06.17

【レビュー】グッドールのブルックナー第7番

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1.ブルックナー/交響曲第7番ホ長調
2.ワーグナー/「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
演奏:サー・レジナルド・グッドール指揮BBC交響楽団(1)イングリッシュ・ナショナル・オペラ管(2)

 私はCD店の視聴機に弱い。この間も大阪の某黄色い店でヒリアード・アンサンブルの「ギョーム・ド・マショー/モテット集」(→amazon.com)を視聴機でぶっ続けで聴いて、結局レジに持っていくハメになったが、その店で丁度その時かかってたのがこのサー・レジナルド・グッドール指揮のブルックナーの「第7番」で、それを耳にするうちに何となく気に入り、結局コレも購入してしまった。
 第1楽章冒頭から柔らかな響きに耳を奪われる。最近よく聴かれるブルックナーではもう少し鋭い響きがするので、初耳の方はちょっと戸惑うかもしれない。だがこのソフトさが耳に優しいので好印象を与える。ブルックナーの一般的な演奏では先ず圧倒的音量、響きの壮麗さ、それからフォルテとピアノを行ったり来たりする起伏の激しさなどが耳に残るが、この演奏はメリハリ感を強調することはなく、その一方でスムーズな旋律のフレージングを優先させ、決して声高ではないが旋律(やその対旋律)を素直に歌わせることに腐心している。冒頭のチェロの有名な旋律でもそうだし、第2楽章の葬送行進曲でもそうだ。ワーグナー・チューバ四重奏に続く弦のアンサンブル(4小節目~)が力まずに優しく気品を持って演奏され、その後の旋律へとスムーズに続いていく、その流れがここでは適切で快く感じられる。第3楽章のトリオでヴァイオリンが簡素ではあるが息の長い旋律を優美に歌い上げているのは見事。指揮者、演奏者がこの部分にかなりこだわっていたのではないかと思わせるくらい好ましい。これらの旋律の扱いはこの曲をにロマンティックな彩りを与えている。それからブルックナーの作品は楽想の変化が激しいため、良くない演奏だとあまり流れを感じずブツ切れみたいに聞こえてしまうのだが、グッドールの演奏はその辺の流れ、曲全体のバランスにも配慮して音量やテンポをコントロールしている。その結果この曲の劇的性格が自ずと浮かび上がってくる。余白の「マイスタージンガー」ではそういうロマン的な解釈が更に推し進められていて、独特の節回しやフレージングが心に迫ってくる。
 総じて独特の妙味を持ったグッドールの演奏は押しつけがましいところがなく魅力的で、聴き疲れのしないもの。ヴァントやチェリのブルックナーは造形的で立派だけど聴いてて疲れる、と感じる方には特におすすめ。録音は想像以上に良く、ブルックナーの響きが充分楽しめる。

(BBC Legends,BBCL41472;ASIN:B00023P43S)

<追記>ちなみに今回グッドールとヒリアード・アンサンブルを買った店でリーズ・ドゥ・ラ・サールのCDの日本語解説付き国内盤(KDC 5006 2180)が売ってました。皆さんも良かったら買ってみて下さい(笑)。そのクオリティの高さに正直ビックリしますよ!

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