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2004.05.08

プレトニョフのこと

 若くして高名なピアニストとなったミハイル・プレトニョフがロシア・ナショナル管の指揮者になったいきさつは私は寡聞にして知らないが、彼の楽団にはロシアの有名な管弦楽団から優秀な演奏家が集まっていると聞いている。しかし数少ないながらも私が聴いた限りでは、その名手の集合体からはアンサンブルの凄みが伝わらないように思える。

 最近もラジオで彼とその楽団による冴えないチャイコフスキーの「第4番」を聴いたところだ。どうにも縦の線が合わないし各楽器の音の密度が薄くてハリがない。緊張感が感じられない響きは例えば同じ頃ロシアの政変に合わせて活動を広げていったゲルギエフとその楽団(マリインスキー管)とは好対照ともいえる。
 そんな彼の活動によって、彼のピアニストとしての評価にいささかの曇りが生じることを私は危惧する。以前東京で彼が聴かせてくれたショパンのピアノ協奏曲でのみずみずしい叙情性には目を見張るものがあった。最近も彼の弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第1番では冒頭の和音の連続は輝かしく、そして音の間が絶妙の間を保っているため何ともいえないはかなさで胸に迫ってくる。最終楽章での手さばきの見事さも申し分ない。ピアノを弾く限りプレトニョフは独特の世界を確実に表現することができるようだ。その世界を指揮者として楽団員に伝える術をまだ充分身につけていないだけかもしれない。
 実は先述のチャイコフスキーを取り上げた演奏会では、指揮者プレトニョフが同郷の後輩ピアニストのルガンスキーのバックに回ったラフマニノフのピアノ協奏曲第3番がまず演奏されていたのだが、ここでの音楽表現は興味深かった。ピアノとオケのテンポのせめぎ合いなどは殆どなくピアノは管弦楽と完全にシンクロして進行し、音の大きさのバランスも絶妙で、完全にピアノとその他の合奏は室内楽的といっても良いくらい1つのユニットとしてまとまりをみせていた。協奏曲の演奏においては指揮者プレトニョフの独奏ピアノの御し方は見事なものであった。その優れた技能を指揮にも生かして欲しい。

References:
Tchaikovsky Sym.No.4 & Rachmaninov Piano Concerto No.3. Nikolai Lugansky(piano), Mikhail Pletnev & Russian National Orchestra ; Chiesa di San Francesco,Locarno,.18 Sep. 2003 (NHK-FM on-air 4 May. 2004)

Rachmaninov Piano Concerto No.1, Mikhail Pletnev(piano), Tugen Sokhiev & Swedish Radio Symphony Orchestra; Berwaldhallens,Stockholm, 5 Dec, 2003 (NHK-FM on-air 11 Apr. 2004)


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